ミッドウィンターの祝歌

英雄たち

マモンは、(少なくとも定命の者に対して)想像を絶する力を持つアークデヴィルである。しかし、世界にはアークデヴィルさえも倒そうとするクリーチャーが存在する。

このような希少な存在は、この多次宇宙で最も強力な存在の一つであり、今回あなたのプレイヤーはその1つになる。このゲームの適切なプレイヤーキャラクタは次のものだ:

後者のカテゴリには次のものがある。

ソーラーの天使やエインシェント・メタリック・ドラゴンのような善のクリーチャーは、スリルを得たいがためだけに悪と戦う可能性が高い。一方、クリーチャーの中には、リヴァイアサンやザラタンのような古い精霊のように、中立なものも存在する。彼らが正義のためにマモンを倒すような善行をする可能性は低い。

プレイヤーがどんなキャラクターをプレイしていたとしても、彼らが貪欲なる敵たちを打ち破り世界の人々の魂を取り戻したい、と思う理由を考えるように奨励しておこう。

悪党とその陰謀

どこぞの冒険者パーティが邪悪なカルトを止めることができなかったせいで、強欲なる守銭奴のアークデヴィル、マモンが世界に召喚された。見込みのない英雄たちが失敗したことで、マモンはこの国の大都市の北にある古代の洞窟に居を構えた。フォーゴトン・レルムでは、この都市はウォーターディープであり、エベロンではシャーンであり、グレイホークではグレイホークの自由都市である。あなた自身のキャンペーンセッティングでは、そのセッティングの中心にある壮大な都市である。

マモンは、寛大さのスピリットであるカリタスを捕らえた。カリタスは天使のような存在で、寛大で情深く、健康と幸福をみなで分かち合おうとする。

多くの点において、カリタスはマモンのアンチテーゼだ。カリタスを破壊すれば、世界は貪欲で暴力的な地獄のような土地になってしまうだろう。

マモンはすでに悪のカルトを利用してカリタスを捕らえており、彼の力を奪いとろうと計画している。実のところ、アークデヴィルはすでに施しの天使を飲み込んでしまった。そして彼を少しずつ消化している。マモンがカリタスから聖なる力を剥ぎ取るまでの間、彼の強力な部下たちが彼の安全を保証している。マモン自身は本当に恐ろしい敵だが、彼はまた、青銅の将軍の二つ名をもつ強力な悪魔バエルなどのしもべに守られているのだ。

冒険の始まり

この冒険は、プレイヤーたちが自分たちのキャラクターたちを選び、彼らの前に寛大なるスピリット、カリタスが現れて始まる。

次のテキストを読んだり、言い換えたりして、シーンを設定すること。この文章は、キャラクターたちがすでに集まっているかどうかという点に関しては意図的に曖昧になっており、キャラクターたちはパーティとして一緒に話を聞いてゲームを始めることもできるし、マモンの隠れ家の外に集まって初めて合流する形にも出来る。

夜の空気は声で満たされる。

柔らかくて優しい声だが、痛みがある。

「誰かこのメッセージを聞いていますか。この呼びかけが聞こえるほどの強きものを探しています。聞いてください。私の名前はカリタス。寛大さを司る天使です。私はミッドウィンターの祝日には大切な人たちと過ごすよう、人々を応援してきました。」

声がすると、君たちの視界の隅に優美な姿が現れる。それは背が高く、優しいカール頭をした優雅な姿であったが、その手は縛られ、顔は悲しみで覆われている。

そうして、更に続けていく。

「強欲の主マモンは天から私を奪い取り、今、私を処刑しようとしています。マモンの教団員と悪魔たちに囲まれて、私は、このままでは休日が破滅を迎えるのではないかと恐れています。どうか、あなたが九層地獄の主に対抗する力を持っているなら、私を助けてください。ミッドウィンターを救ってください。」

天使の声が雪に覆われた夜の空にこだまし、ヴィジョンが消えていった。

オプショナル・トラベル・モンタージュ:マモンの棲家への旅

この冒険の英雄たちほどの強力なクリーチャーならば、おそらく短時間で広大な距離を移動する手段を持っているだろう。そのため、プレイヤー達は自分たちがどのように到着したのかを創造的に説明することができる。これにより、プレイヤーは、戦闘ルールでがんじがらめになる前に、物語を直接コントロールする機会が与えられる。

エンシェント・ドラゴンは、人型生物のパーティを容易に背負って運ぶことができ、天使たちは自分たちを運ぶことができる。エルダー・エレメンタルたちはそれほど効率的に移動することはできないが、創造的なプレイヤーは、それでも彼らの旅を面白く語ることができるだろう。リヴァイアサンは自らを純水に変え、川をまっすぐに流れてマモンの隠れ家に行くかもしれないし、ザラタンならば単にマモンの隠れ家に直接隣接する地の次元界から呼ばれるかもしれない。

この短いトラベル・モンタージュを拡張したいのであれば、「Exploring the Wilderness: Navigation and Player Agency」「Traveling with Style: Skill Challenges」など、旅行に関する他の記事を読むことを検討するとよい。

悪の山への到着

マモンの要塞は、荒涼とした山中の巨大な洞窟であり、何らかの文明都市の北に位置している。山の周りには激しい風が吹き荒れ、雪は分厚い。地面に沿って飛行することはできない。金色の光がゆらめく不気味なランタンの列が、洞窟の入り口につながる道を照らしている。

20人のカルト教団員と5人の魔道士の一団が、厚い毛皮を着て、洞窟入り口の外に立っている。彼らは奇妙な金の炎に身を寄せ合いつつ、侵入者を警戒しているが、ひどい気象条件のために60フィートを超えるとほとんど不可視となる。キャラクターたちが振動知覚や超視覚のような別の視覚を持っている場合、彼らはこの貪欲な盲目の愚か者集団を容易に不意打ちすることができる。

地形。マモンの隠れ家の入口は、直径60フィートのほぼ円形の台地である。高さ50フィートの洞窟の口が一方の端に立ち、棲家に通じている。カルト教団員の陣営は台地の真ん中にある。

黄金の炎。この隠れ家の火や、マモンと彼の配下による[火]呪文の炎は、マモンの地獄的な強欲の力で金色に燃える。これらの炎は「バルダーズ・ゲート:地獄の戦場アヴェルヌス」で述べられているヘルファイアの力を持っている。この[火]によって殺された人形生物は、その魂がスティクス川に注ぎ込まれ、そこですぐにレムレーとして生まれ変わる。

戦術。カルト教団員たちは、キャラクターたちほど強力な存在に勝つチャンスはないことを知っている。戦闘の第1ラウンドで、魔道士はカルト教団員に対して、最強の呪文を使いながら、隊列を保持して攻撃するように叫ぶ。しかし、カルト教団員の半分は隊列を破り、洞窟入り口に逃げ込む。彼らは中に入ると、準備をしているバエルと彼の仲間に警告する。

戦闘遭遇:バエルとの戦い

トンネルが洞窟の巨大な入り口から二段の部屋へと続いている。

一つ目の段は薄ら寒く、マモンのカルト教団員だらけだ。二つ目の氷段は30フィート下にあり、強欲の主自身が集めた財宝で満たされている。

マモンの最も偉大な将軍である雄牛頭の悪魔バエルは、隠れ家を防御するようカルトの戦士たちに命じる。

バエルと共に戦うのは、20人のカルト教団員、10体のバーブド・デヴィル、そして権力欲の強いボーン・デヴィル、クレソン中尉である。

これらのうち、カルト教団員はPCたちにとってほとんど重要ではない。彼らの攻撃はゲーム的な効果はなく、彼らは単にやられ役として扱うことができる。

「Hoard of the Dragon Queen」から借りたこの地図を使って、マモンの隠れ家の正面玄関、内部に通じるトンネル、バエルの部屋を表すことができる。

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戦術。バエルは司令官であると同時に戦士でもある。彼はドミネイト・モンスターとシンボルの呪文を使って敵を弱体化させつつ、彼の部下たちに仕事をさせることを好む。

しかし、彼は呪文を唱え終わってもまだ戦場が制圧されていないならば、すぐに前線に立ち、地獄のモーニングスターで戦う。

バーブド・デヴィルは、キャラクターたちが接近するまで火炎投げを使用し、その後、爪と尾で攻撃する。ボーン・デヴィルは空を飛び、他の悪魔の味方と戦っている敵を攻撃する。

準備の有無。このエリアの住民たちがキャラクターの来訪の準備をしない場合、バーブド・デヴィルとカルト教団員は上の部屋でうろうろしており、バエルとボーン・デヴィルは宝物庫で会話に没頭している。

外からカルト教団員が一人でも入ってきて皆に警告をした場合、ここにいるすべての戦闘員は隠れて待ち伏せを行う。上の部屋の南の通路ではカルト教団員とバーブド・デヴィルが隠れ、上の部屋の屋根ではボーン・デヴィルが身を寄せており、バエルは宝物庫に潜む。

宝物庫。この部屋にある金の山は、マモンが蓄えた富のほんの一部にすぎない。約500000cp、100000sp、10000 gpがある。

戦闘遭遇:ミッドウィンターの戦い

バエルの部屋の南西にある氷の洞窟を通って移動すると、キャラクターたちは山の地下にある宝庫にたどりつく。ここは様々な金銀財宝が集まるマモンのラウンジである。そこには多次元宇宙中からの何百万、おそらく何十億という金貨が蓄えられている。

このそびえ立つ宝庫の頂上にはカリタスがぶら下がっており、彼の全身は4人のチェイン・デヴィルに支えられた鎖で包まれている。

マモンはこの天使を拷問し、ゆっくりと彼の捕獲をいたぶってきた。彼は最終的にカリタスを破壊し、その力を吸収するつもりである。キャラクターたちがこの部屋に入ると、マモンはフライを唱えて飛び出し、宝山のてっぺんまで移動したのちに天使を引き裂く(後述の「寛大のスピリット、カリタス」で説明)。

「Rise of Tiamat」から借用した地図を使って、マモンの隠れ家の中心部を表現することができる。エリア1がエントランスで、エリア2がメインフロアである。洞窟の高さは200フィートで、7から12のエリアは同じで、地上100フィートの高さにある。エリア13は中央の部屋と同じで地上から200フィートの高さである。

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強欲の主マモン

マモンの本来の姿はかつては太ったピット・フィーンドであった。彼はそうした姿を取ることもあるが、アスモデウスは彼の姿を筋肉質な人間の胴体、巨大な2本の腕、人間の頭をもつ巨大な蛇の姿に変えた。彼の口は尖った歯と2つの大きな蛇の牙を持っている。

不浄なる暗黒の書(2001年)

マモンにはモロクのステータスを使用する。これは「モルデンカイネンの敵対者大全」に掲載されており、次の変更を加える。

戦闘中、マモン人はどのターンにおいても敵をあざ笑い、武器を置いて彼の意志に従うならば、心の望みを叶えてやろうと誘う。彼はできる限りカリタスへ噛みつき攻撃を使い、キャラクターたちへは爪と地獄のショートスピア攻撃を使う。カリタスを押さえているチェイン・デヴィルは、片手を使って天使を制止し続け、もう片方の手を使ってキャラクターたちを攻撃する。

寛大のスピリット、カリタス

カリタスは地獄の鎖で繋がれたソーラーである。4体のチェイン・デヴィルのうち、1体でも鎖をつなぎ続けていれば、カリタスは拘束状態であり、この拘束によって、さらに盲目状態と麻痺状態でもある。もしカリタスが解放されれば、彼はキャラクターたちと一緒に戦うが、疲労状態は3レベルである。

カリタスには121のヒットポイントが残っている。ヒットポイントが0になれば、希望はすべて失われる。カリタスの0のヒットポイントに達すると、マモンはアクションを使ってカリタスの精髄を食べることができる。そうなると、このアークデヴィルはPCたちではもはや太刀打ちできないほどの力を持つ地獄の存在と化す。1000フィート以内のすべてのクリーチャーは、難易度30【耐久力】セーヴィング・スローを行わねばならず、失敗すると550(100d10)の[死霊]ダメージを、セーブに成功したらその半分のダメージを受ける。さらに、世界から寛大さと慈愛の精神は消え去り、人々は利己的で貪欲になる。

結末:すべての人への恩寵

もしマモンが敗北すれば、彼の肉体は崩壊し、彼は九層地獄に吸い戻され、沈んだ宮殿で苦痛に満ちた再生を始める。

カリタスは救われ、無欲と寛大さの精神は、これらの美徳が最も大切な祝日に間に合うように世界に返される。冬の最も暗い日がこの地に来る。しかし、すべての窓にはともしびがある。

家なき者には避難所が与えられ、友人には贈り物が与えられ、見知らぬ人には慈善と親切が示される。

ほんの一瞬であっても、世界に平和が訪れるのだ。