4月のにわか雨と不浄の花

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この戦闘遭遇は、5レベルキャラクターのパーティ向けだが、より高レベルのパーティが挑戦できるよう拡張できる。ドルイドとレンジャーはこの遭遇の一部を非暴力的に解決できるかもしれない。

また、〈自然〉技能が得意なキャラクターは、この遭遇の最初の待ち伏せを避けることが容易となる。さらに、この遭遇の一部は、ドルイドやバードのようなスピーク・ウィズ・プランツを発動することができるキャラクターによって、戦闘なしで解決することができる。

キャラクターたちは、残酷な魔女プルヴィアナが織り成す呪文によって命を吹き込まれた、殺人花の餌食になるかもしれない。彼女はこの呪術を雨に込めており、力強いトリエントとドライアドは魔法のかかった雨によって毒され、汚染された。

現在、これらの汚染された植物は完全にプルヴィアナの支配下にあり、彼女はこの地域を通る無垢な冒険者たちに、その破壊的な力を試すつもりだ。

プルヴィアナはかつてはドルイドであったが、所属する部族から追放された。彼女は、彼らのドルイドサークルにおいて、家族を作っていた女性のつがいを打ち殺したのだ。

プルヴィアナはその不名誉によって激しく追いやられ、苦しい彼女の心はすぐに追放を正当化し始めた。彼女は自分に言い聞かせた。悪いのは、堕ちたサークルの方であって、彼女の方ではないと。彼女は確かにサークルの女性を攻撃したが、それは、その女性らが放蕩と逸脱にふけっていたからであり、サークルの残りのメンバーは彼女らに騙されているのだと。

それから、彼女は自らをプルヴィアナと名乗るようになる。そうすることで、サークルでの逸脱行為の痕跡を洗い流そうとしているのだ。

真の英雄たちは、彼女の自らを誇大化する邪悪さに対抗できるだろう。彼女の狂った計画に参加したくない冒険者たちも、生き残るためには戦うよりほかない。

遭遇の要約

キャラクターたちは、ダンジョンの冒険を終え、地元の街に向かって広々とした平野を旅している。旅の途中、彼らは明るい緑の草と鮮やかなスミレの草原に出くわす。ドルイド、レンジャー、その他の高い【知力】〈自然〉技能を持つキャラクターたちは、ここで何かがおかしいことに気がつく。

もしキャラクターがここにいる魔法のかかった植物をなだめることができれば、野蛮な戦いを避けることができる。しかし、失敗すれば、邪悪な魔女によって魔法をかけられた肉食植物が地面から飛び出して攻撃を仕掛けてくる。

この戦いの途中に、魔女が現れる。彼女は苦闘する冒険者たちを見て喜ぶかもしれないし、脆弱な植物たちを助けようとするかもしれない。彼女を打ち負かしたとしても、自動的に汚染された花がもとに戻るわけではない。しかし、苦しみがこれ以上広がることはなくなる。もしキャラクターたちに、汚染された植物を救うことができる味方がいなければ、これらの植物を清めるのは別の冒険のフックとなりえる。

遭遇のスタート

キャラクターたちは広い野原を歩いている。おそらく冒険が終わって町に戻る途中だ。そこで、彼らは美しい花畑に出くわす。次の文を読むか言い換えること:

空は雲で満たされ、地面から雨が降った後の湿った土の匂いがする。

緑豊かな芝生の野原を貫く土の道を歩いていくと、いつしか周りには花が咲き乱れていた。たくさんの色と独特の香りが君たちの鼻をつく。花の中で最も多いのはスミレだ。紫色をした花の海が、道の両側に広がっている。

受動【知力】〈自然〉または【判断力】〈生存〉の値が15以上のキャラクターは、花に何か異常を感じる。第一に、この種類のスミレが咲くシーズンは1ヶ月以上先であるにも関わらず、花は満開だ。第二に、植物の集まり方が不自然だ。人間が植えたのではないかと思うほどだ。判定に成功したキャラクターは植物の攻撃で不意打ち状態にならない。

受動【判断力】〈知覚〉の値が20以上のキャラクターは、ほとんど風がないにもかかわらず、植物が動いているように見える。このキャラクターは、植物が攻撃しても不意打ち状態になることはない。

特殊な受動判定

受動判定の最も一般的な技能は受動【判断力】〈知覚〉だが、任意の能力と技能習熟を用いて受動判定を行うことが出来る。この状況において、自然界を先天的に理解しているか、自然を広範囲に研究してきたキャラクターは、〈生存〉や〈自然〉能力を利用して、この植物の生体は何かが微妙に間違っていることを受動的に認識することができる。
受動【知力】〈自然〉と【判断力】〈生存〉判定は通常行われないため、〈自然〉や〈生存〉の技能が得意なキャラクターがいるかを最初に尋ねたほうがよいかもしれない。もし得意なキャラクターがいるのであれば、そのボーナス値を尋ねること。ボーナスがわかったら、そのボーナスに10を加算して、キャラクターの受動判定値を決定する。

そして、いずれかのキャラクターの受動判定が成功したら、情報を彼らに伝える。この情報はこっそり伝えたり、メモを渡したり、PLを部屋から出して情報を伝えてもよい。

特定の技能を要求すると、驚きは少なくなってしまうかもしれないが、グループにとって良いことかもしれない。〈自然〉の知識に関わる何かがこの地域にあるという考えを植え付けることは、肉食花が出現する前兆となる。単に殺人植物に攻撃されるという展開を、前兆をつけることによってあるドラマチックな展開にすることができる。
DMの中にはドラマチックなナレーションを通して展開を演出しようとするものもいるが、ゲームルールを通してこうした考えをプレイヤーの心に植え付けるのは、単純ながら効果的で、プレイヤーからスポットライトを取り去ることなく緊張を高めることができ、描写へとつなげることが出来る。この方法はナラティブ指向のDMのシーンだとしても、切れ味のある劇的さを演出できる。

植物が攻撃するとき

キャラクターが何かおかしいことに気づくと、スミレは警告なしに生き生きと跳ね跳び、キャラクターに食いつこうとする。【知力】〈自然〉や【判断力】〈知覚〉の値が十分に高くなかったキャラクターは1ラウンド目は不意打ちされた状態となる。肉食植物には2種類のタイプがある。

街道に近い植物は、カミソリ刃のつたで覆われたスミレであり、シャンブリング・マウンドのステータスを用いる。道から離れた植物は、絡まったつたがぼんやりと人間のような形をしており、それが美しいスミレに覆われている。これらの植物はドライアドのステータスを用いるが、以下の修正を加える。

どちらのタイプのモンスターでも、近接武器攻撃を行う際はスミレがキャラクターの肉を齧るため、追加で3(1d6)ダメージを与える。

土の道は幅10フィートで、両側に広大なスミレの畑が広がっている。これらのスミレは移動困難な地形として扱われる。加えて、植物ではないクリーチャーがスミレ畑の中でターンを開始したり、そのターンに初めてスミレ畑内に入ったりした際は、十数もの小さなスミレの花がその足首を噛み付く。これらのスミレは+5 命中ボーナスをもち、攻撃が成功すると3(1d6)の[刺突]ダメージを与える。

道沿いにスミレに覆われたシャンブリング・マウンドが1体いる。この植物は最も近くにいるクリーチャーを攻撃し、とにかく包みこみを狙う。土の道から約30フィート離れたスミレ畑から、スミレに覆われた4体のドライアドが出てくる。ドライアドたちは、最初のターンにバークスキンを発動し、その後、キャラクターとの距離を縮めながらアイスナイフを発動する。隣接すると、生き残ったドライアドの半分はショッキング・グラスプを発動し、シャンブリング・マウンドを回復させようとする。残りの半分はシャレイリを発動してキャラクターを攻撃する。

高レベル。キャラクターが少なくとも11レベルであれば、3体のシャンブリング・マウンドと8体のドライアドが出現する。

スミレ畑と、モンスターのスミレによるダメージは7(2d6)[刺突]ダメージに増加する。

もう一つの勝ち方

キャラクターがスピーク・ウィズ・プランツを唱えて植物と会話を試みると、これらのクリーチャーがかつてはドライアドだったものが汚染されたものだということがわかる。

また、この畑のどこかに毒化されたトリエントが埋められていることがわかる。これらの植物はみな自らの意志に反して行動しており、プルヴィアナという邪悪な魔女の意志に縛られている。

これらの植物とコミュニケーションをとるクリーチャーは、難易度15【魅力】判定を成功させ、戦いをやめて何もしないよう説得することが出来る。成功すると、植物は1時間、あるいは再び攻撃されるまで、あるいは魔法使いのプルヴィアナが攻撃を命じるまで攻撃を停止する。さらに、この判定は、クリーチャーがスミレ畑を移動するときに受けるダメージを受けなくさせる事ができる。

リムーヴ・カースを植物の1つ(または花の10フィート四方のスミレ畑)に唱えると、プルヴィアナの呪いから解放される。植物は助けてくれた人のために戦う。

魔女の登場

次のいずれかの条件を満たすと、魔女プルヴィアナが現れる。

プルヴィアナは、ケープ・オヴ・ザ・マウンティバンクと、ドレッド・ヘルム、フェザートークン:ツリーを持つ魔道士である。彼女は花畑の噛みつきスミレに害されることはなく、彼女にとっては移動困難な地形でもない。彼女はグレーター・インヴィジビリティの効果のもと、冒険者たちが最初に攻撃された場所から60ftの地点まで戦場を移動し、その後、冒険者たちの注意を引くために高笑いを上げる。

「うまくいった!」と彼女は大声でどなる。
「あんたらは私の生ける植物の強さを最初に体感したのさ。私の呪文は成功さ・・・雨に私の魔法を込めたのさ。すぐに私の呪術は広い範囲に降り注ぐよ。あんたらは私の魔法が身震いするほどうまく行ったことを証明してくれた。あんたらもわかってくれるだろうね?あんたらを早く殺して養分にしなきゃいけない私の気持ちがわかってくれるだろうね。」

彼女の声はスミレ畑中に広がり、その大まかな位置は、たとえ彼女が不可視状態であっても、あたりをつけることができる。聞かれれば、彼女はドルイド・サークルから亡命した話をまるでメロドラマのように詳述する。彼女はその肥大化した自意識のせいで、発言の多くが独り言である。彼女は攻撃されたり、インヴィジビリティが終わったりすると、フェザートークンを使って強力な柏の木を作り出す。彼女はこの木を使って近接戦闘の間合いから離れ、敵を魔法で破滅させようとする。彼女は、火の魔法で自分の植物を巻き添えにしても、キャラクターを殺すためなら気にしない。

高レベル。キャラクターが11Lv以上の場合、プルヴィアナは大魔道士であり、タイム・ストップの代わりにミーティア・スウォームを用意している。また、スタッフ・オヴ・スウォーミング・インセクツを所持している。

魔女の敗北

キャラクターたちがプルヴィアナを倒せば、彼女が所持している魔法のアイテムを略奪することができる。しかし、プルヴィアナを打ち負かしただけでは、彼女がしでかした損害を元通りにすることはできない。

まだ魔女の呪いの影響が残るドライアドたちは戦いを続けたり、キャラクターがいなくなった後もこのスミレ畑に残り続けて、次に来た不運な旅人に襲いかかったりする。

もしキャラクターたちがドライアドたちに話しかけることができ、少なくとも1人の呪いを解くことができるなら(上の「勝利へのもう一つの方法」参照)、ドライアドはキャラクターたちを、スミレ畑に埋められた、野を汚染するトリエントのもとへと案内する。

トリエントにリムーヴ・カースを唱えることで、プルヴィアナの呪いから解放される。彼はキャラクターとドライアドに感謝を述べる。ヴィオラという名の大きなジャカランダであるトリエントは、キャラクターたちに畑全体を浄化する方法を見つけるよう求める。

もしキャラクターたちがこのトリエントの願いを叶えることに興味があるのならば、これは別の冒険の始まりとなるかもしれない。

ヴィオラは、彼らが同意すれば、自然の神エローナのチャームを約束する。DMとして、君はこの先に待ち受けるクエストを作成する権限がある。このクエストではキャラクターがスミレ畑をどうやって浄化するか、そしてどんな困難が待ち受けているかを決めねばならない。プルヴィアナの邪悪な魔法を取り除く方法の一つは、エローナや他の自然の神格の名の下に、この畑の中心でハロウを唱えることだ。プルヴィアナを追放したドルイドサークルのリーダーならば、この呪文を発動できるかもしれない。