パート1:アイスブレイカー号に積みこめ

フェイルーンの北の凍土アイスウィンド・デイルへ旅する準備はできているだろうか?

時代は変わり、この冷たく孤立した土地には無数の噂が果てしない吹雪の雪片のように渦巻いている。先週末の「D&D Live 2020」で発表された次のD&Dアドベンチャーは、「アイスウィンド・デイル:凍てつく乙女の詩」というタイトルのダーク・ファンタジー・ホラーだ。

この遭遇は、「アイスウィンド・メール:特別な手紙」という5部(あるいはそれ以上)からなる遭遇シリーズの始まりである。これは非公式のダーク・コメディで、公式のアドベンチャーに繋げることができる。まあ、なんというか、公式アドベンチャーにちょっとした馬鹿げた要素をつけ足してプレイヤーたちと楽しもう、という感じの内容だ。

この遭遇シリーズは、新規プレーヤーとD&Dベテランの両方を念頭にデザインされている。このシリーズでは、プレーヤーのキャラクターたちが、危険な宅配便を専門とする傭兵企業、ラスカン・デリバーズのメンバーとなって冒険を始める。 港を有する都市国家ラスカンにおいて、ラスカン・デリバーズは程々に名が知られている。特に北のアイスウィンド・デイルのテン・タウンズへの海上輸送や、ミスラル・ホールのドワーフ・ホールドへの輸送などが知られている。君のキャラクターたちは、ラスカン・デリバーズの新メンバーとして、ラスカンからソード・コースト北部に沿って多くの小包を沿岸の町に配達し、最後にテン・タウンズへの配達を完遂する。

「ソードコースト冒険者ガイド」では、ラスカンやアイスウィンド・デイルの簡単な情報を読むことができる。

多彩な遭遇(戦闘、探検、社交的):アイスブレイカー号に積みこめ

この遭遇は1レベルのキャラクターたちのパーティに適しているが、「D&D Beyond Encounter Builder」を使用して5レベルまで簡単にスケールアップできる。

この遭遇は、物資を集めて北へと向かうキャラクターたちの旅の始まりを描いている。

船が彼らを待っている。アイスブレイカー号と呼ばれる有名な帆船だが、配達すべき荷物を積みこむ必要がある。この遭遇で、キャラクターたちはラスカン中を旅して、過去のD&Dアドベンチャー由来の多くの色彩豊かなキャラクターたちから荷物を集めなければならない。 その中には、権力に貪欲な秘術団の使者や傭兵会社ブレイガン・デアースのドラウのメンバー、そして、とんでもない無法者が含まれる。

この物語は、ラスカン市内ミラー川の北岸にあるラスカン・デリバーズの倉庫で始まり、司令官である荷物管理者レンナルト・バシクから命令を受ける。バシクはきちんとした服を着た輝く瞳のハーフオークのベテランで、広い肩幅と、手入れされたペンシルひげを持っている。物語を開始するために、場面を設定し、次の文を読むか言い換えること。

「ラスカン・デリバーズの新たなるメンバーであるみなさん! 最初の冒険が始まったことをお知らせできることを誇りに思います!」

そう君たちに語りかけるのは、君たちが雇われた企業「ラスカン・デリバーズ」のリーダーにして小包管理者のレンナルト・バシクだ。彼は肩幅の広い魅力的なハーフオークで、しゅっとしたスーツを着ている。

「ラスカン中の多くの人々から依頼を受けました。その全員が北行きの荷物を持っています。みなさんの仲間は現在、北へ向かうための船、アイスブレイカー号の出港準備をしています。私はこの都市の地図と、みなさんが回収する荷物の持ち主のリストを用意しました。」

「彼らは皆さんに十分な前金を支払い、そして配達が完了すればさらに料金を支払う予定です。武器と鎧を忘れないでください、友人たちよ。みなさんの旅は危険なものですが、このラスカンの都市もまた、安全な港というわけではありません。準備ができたら、この地図とリストに目を通してください。これらの配達物のうち三個を集めてください。残りは他の仲間達が回収し、アイスブレイカー号に積載します。友人たちよ、どうか安全な旅を。」

ダンジョンマスターのヒント:プレイヤー達を物語に入り込ませる  
  
場面を設定したら、キャラクターを物語に入り込ませよう。彼らは荷物の持ち主のリストを持っていて、最も興味のある3人を選ぶことができる。残った小包は、配達業者の他のメンバーが回収し、アイスブレイカー号に送られる。プレイヤー達はお互いのキャラクターをよく知らないだろうから(キャラクターとしてもPLとしても、チームに配属されたばかりの新人なので)、このタイミングはラスカンを出発する際にキャラクターに自己紹介を促す絶好の機会である。

ラスカン探索

小包を管理するバシクは、キャラクターたちにラスカン市の地図と、荷物の持ち主のリストを提供する。このマップとリストを小道具として使用する場合、オンラインでプレイするならプレイヤー達とデジタルで共有する、直接プレイするなら印刷する、などしてプレイヤー達全員が一緒に見て位置を指し示せるようにすること。集荷に必要な人は地図に載っていないため、プレイヤーはリストと地図を交互に見なければならず、都市内の旅に没頭することになる。

プレイヤーがリストと地図を見る間に、DMであるあなたはメモをチェックして次の遭遇のための準備ができる。これらの各遭遇には、遭遇を突破するための具体的な方法が記述されている。しかし、D&Dはプレイヤーの創造を推奨するゲームだ。もし君のプレイヤー達が面白そうで刺激的なアイデアを思いつき、ここで紹介する方法に合わないとしても、とにかくやらせるのがいいだろう!君は彼らがやりたいことに適した(おそらく技能習熟の1つを使う)能力値判定を素早く考え出す必要があるかもしれない。

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送り主のリスト

このリストに載っている人はそれぞれ、名前の横にちょっとした情報が記載されている。キャラクターが望むなら、DC15【知力】判定を行い、その人物に関する情報を思い出すことができる。成功した場合は、このキャラクターたちに関する情報を1つ伝える(詳細については、各キャラクターたちの小遭遇を参照すること)。

緋色のマッカス

緋色のマッカスは”秩序にして悪”のティーフリングの魔道士であり、竜の伝承に関する学者で、秘術団の構成員でもある。アイスウィンド・デイルや動氷海を冒険し、竜にまつわる遺跡の捜索や、ドラゴンの考古学的調査、ドラゴンのインタビュー旅行などを数多く行ってきた。彼女の希望はテンタウンズの法から逃れ潜む「はぐれもののラグメル」という専門家に自身のもつアーティファクトを届けることだ。緋色のマッカスについては「The Rise of Tiamat(未訳)」の第10章を参照すること。

マッカスを見つけるためには、キャラクターは秘術団の本拠地である「秘術の主の塔」に向かわねばならない。マッカスとの遭遇では、キャラクターたちは塔にいる無愛想な門番を説得して、中に入れてもらう必要がある。主の塔へ向かう間になにかに遭遇することはない。到着したら、以下を読んだり、言い換えたりして、状況を説明すること。

君たちは秘術の主の塔の入り口に到着する。それは、幹の折れ曲がった樹木が地面から成長しているような外見の塔で、見た目は人工的とも有機的とも見て取れる。入口に立っているのは、スポーツ選手のような体格をした革のスカルキャップをかぶった蛮族じみた衛兵だ。君たちが近づくと、彼は君たちをにらみつける。

キャラクターたちは門番(アーネスト・ゲルド、ならず者のヒューマン)を説得して中に入る必要がある。DC 13【魅力】〈ペテン〉〈威圧〉または〈説得〉の判定に成功したキャラクターたちは、彼を落ち着かせてマッカスを呼ぶよう説得できる。君が望むなら、キャラクターたちが具体的なセリフや身振り手振りを伴ってどのように説得をしたかに応じて、判定を有利にしてもよい。失敗すると、門番は彼らを鼻で笑い、侮辱する。別のキャラクターは再度判定を行えるが、すべてのキャラクターが判定を終えると門番は彼らを入れることを拒否する。

キャラクターが主の塔に入ってマッカスを見つけると、彼女は笑顔で挨拶し、ドラゴンの魅力を伝えようとはしゃぎまわる。その後、彼女は落ち着くと、小型の金属箱に入った荷物を彼らに渡す。彼女曰く、それは竜に関わるアーティファクトで、テンタウンズの友人に鑑定を頼みたいのだという。鉛で閉じられた金属箱は魔法で封印されており、アダマンティン武器からの[殴打]、[刺突]、[斬撃]および、[力場]を除くすべてのダメージに対して完全抵抗があり、強引に開ける場合はDC25【筋力】判定の成功が必要である。

彼女は料金の一部の前払いとして、それぞれのキャラクターに5gpを払う。

フェルレクト・ラフィーン

フェルレクト・ラフィーンは、女性として生まれた”中立にして善”の男性のドラウの拳銃使いであり、現在は、悪名高きドラウの傭兵ジャーラックスル・ベインレが率いる有名な傭兵企業、ブレイガン・デアースの構成員である。フェルレクトは、何年も前にメンゾベランザンの地下街でロルスの残酷な巫女たちから逃れ、今ではジャーラックスルの最も忠実なしもべとなっている。彼はためらうことなく隊長のために命を投げだすことだろう。「ウォーターディープ: ドラゴン金貨を追え」を参照し、ドラウのガンスリンガーのステータスやフェルレクトに関する詳細を見ること。もしもこのアドベンチャーを所持していない場合は代わりに古強者のデータ・ブロックを使用するとよい。

フェルレクトを見つけるために、キャラクターたちは、ドラゴン港の最北端の波止場に係留された壮大なガレオン船、”罪作りな男”号に向かわねばならない。到着すると、フェルレクトの親友であるクレイビッグという”混沌にして中立”のドラウの拳銃使いに止められる。町にいる間、クレイビッグを含むブレイガン・デアースのすべてのメンバーはみな「ハット・オヴ・ディスガイズ/変装帽子」を着用しており、ヒューマンの見た目をしている。”罪作りな男”号へ向かう途中、なにかに遭遇することはない。到着したら、以下を読んだり、言い換えたりして、状況を説明すること。

ドラゴン港に到着すると、ドックの1つに船が係留されている。船体に”罪作りな男”号の名前が刻まれた雄大な3本マストのガレオン船だ。身軽な体躯で幅広の帽子をかぶったヒューマンが、船の桟橋の前に立って波止場を監視している。君たちが近づくと、彼の視線は君たちに向けられる。彼は眉をひそめる。

“罪作りな男”号に乗船するため、キャラクターはDC 13【魅力】〈芸能〉の判定に成功し、クレイビッグに好印象を与えなければならない。クレイビッグの嗜好は単純で、だじゃれやカード手品、魔法の見世物を好む。これらのうちのどれかを行うキャラクターは、【魅力】〈芸能〉判定が有利となる。失敗すると、クレイビッグは肩をすくめてキャラクターたちを振り払う。別のキャラクターもこの判定を試みてよいが、すべてのキャラクターが失敗すると、クレイビッグは彼らを中に入れることを拒否する。

“罪作りな男”号に乗ると、フェルレクトはすぐに一行を見つける。彼は暖かく彼らを迎え入れ、寒ければ熱いキノコ茶のジョッキを差し出す。彼はジャーラックスルがアイスウィンド・デイルの近くにいること、そして彼がフェルレクトでさえ知らない秘密の任務を行っていることをヒソヒソ声で告げる。フェルレクトは、ジャーラックスルに「センディングストーン」を届けて、彼が不在の間でも連絡できるようにしたいと考えている。彼はその石を小型の麻布の包みに入れてキャラクターに渡す。もう1つは自分で持っている。

フェルレクトは料金の一部を前払いし、それぞれのキャラクターに5 gpを与える。

ドラゴンベイト

ドラゴンベイトはソーリアルという珍しい爬虫類の人型生物である。彼はアータス・シンバーという放浪者の良き友人である。アータスは「リング・オヴ・ウィンター/冬の指輪」と呼ばれる凍てつく乙女オーリルの強力なアーティファクトを所有する男である。ドラゴンベイトとアータスは少し前にチャルトのジャングルで出会い、ドラゴンベイトはアータスのその後の冒険に同行することを決めた。

ドラゴンベイトを見つけるためには、キャラクターたちは、血汐島への橋近くにあるミラー川北岸の人気の酒場、「片目のジャックス」へ向かわねばならない。ラスカンに滞在したことのあるキャラクターたちなら誰でも、このおしゃれで新しい高級酒場がどこにあるかを正確に知っている。ここは裕福な冒険家や外国の社交界にとって人気のある集合場所となっている。到着したら、以下を読んだり、言い換えたりして、状況を説明すること。

酒場に入ると、間違いなく依頼人であろう人物を発見する。彼は背が低く、ずんぐりしており、立派な防具を着ていて、緑のうろこ状の皮膚を持っている。このクリーチャーはあなたが今まで見たことのない種類のドラゴンボーンのように見える。彼は君たちの方を見て、陽気に手を振る。かすかなレモンの香りが漂う。

ドラゴンベイトとは  
  
ソーリアルの言語は、ヒューマンの可聴域を超えたクリック音やホイッスル音の組み合わせであるため、ドラゴンベイトは感情を伝えるのに香りに頼る傾向がある。会話ができるクリーチャーに理解してもらうため、彼は香りを「叫ぶ」必要がある。ドラゴンベイトの香りとして知られているものには、ブリムストーン(混乱)、バラ(悲しみ)、レモン(喜びや喜び)、焼きパン(怒り)、スミレ(危険や恐怖)、スイカズラ(優しさや心配事)、木煙(献身や信仰点)、タール(勝利やお祝い)、ハム(神経質や心配事)などがある。  

ドラゴンベイトは高さ4フィート10インチ、体重は150ポンドで、乾燥したしわのある体皮を持っている。ホーリィ・アヴェンジャー・ロングソードを操り、青、赤、白のシールドを携える。彼はパラディンの一般的な特徴を持っているが、ドラゴンベイトはどのクラスの一員でもない。「シェン状態」という能力を使用して、彼は自分から60フィート以内のあらゆるクリーチャーの属性を調べることができる。(魂を喰らう墓より)

ドラゴンベイトは共通語でコミュニケーションをとることができず、口笛を吹く、甲高いソーリアル言語を発する、あるいは香りを通して感情を伝えることによってのみコミュニケーションをとる。キャラクターたちは彼に会って、ドラゴンベイトがアイスウィンド・デイルのケルヴィンの石塚にいるアータス・シンバーに何かを贈りたがっていることを理解しなければならない。ドラゴンベイトは基本的に、キャラクターとジェスチャーゲームをして、時には香りを「叫ぶ」ことで、より複雑な話題を理解させようと試みる。

ドラゴンベイトが身振りと感情を通じて伝えたいメッセージはこれである:

「私の友人、冷気の指輪を指にした青白い男が、凍えるような北部の山岳にひとり行ってしまいました。これを彼のところに持っていってください。」

キャラクターたちがドラゴンベイトの意図を理解できず、混乱している場合は、その1人にDC10【判断力】〈看破〉判定をさせて手がかりの意味を識別させる。ドラゴンベイトは自分の意思疎通のやり方が他人には難しいことを理解しており、前向きに努力しようとするが、しばらくすると意気消沈する。この対話が長く続くと、ドラゴンベイトは自分の要求を理解してくれる者がいないと感じ、頭を振って荷物を持ち、興味を失い、ぶらぶらと去っていく。

アータスがアイスウィンド・デイルに出かけたにもかかわらず、ドラゴンベイトがラスカンで待っているというのはなんとも奇妙だ。しかし、DC 10【判断力】〈看破〉判定に成功したキャラクターは、ラスカンにいるドラゴンベイトは自らを毛皮で覆っており、寒さに非常に弱いことを察する。キャラクターが意思疎通のゲームに勝利すれば、ドラゴンベイトは彼らに荷物を渡す。荷物は小さい手彫りで作られたチーク材の箱であり、魔法の鍵が付いている。 この鍵を開けるには、盗賊道具を使ってDC30【敏捷力】判定に成功する必要がある。彼は事前に料金の一部を前払いする。それぞれのキャラクターたちに5gpを払う。

ロール

ロールは、”中立にして悪”のハーフオークで、クラーケン協会という恐るべきカルトと関係をもつ無愛想な暗殺者である。海での惨敗の後、クラーケン協会との契約が切れ、彼は運に見放された。(詳細は「Storm King’s Thunder(未訳)」第11章を参照) 現在、彼はほとんどの時間を、ドラゴン港の海賊たちが頻繁に訪れる酒場「カットラス」で、酒を飲んだり地元住民を脅したりして過ごしている。彼らが到着したら、以下を読んだり、言い換えたりして状況を設定する。

君たちは探していたハーフオークの暗殺者がバーの丸椅子に酔っ払って座っているのを発見する。彼は、安物の布で粗雑に包まれたとても高そうなシャドウデイル・ブランデーの大ビンを胸に抱えている。

キャラクターたちがやってくると、彼は酔っぱらってその腕前を試すとわめく。ロールはふらふらと立ち上がると、攻撃を仕掛けてくる!彼のステータスには暗殺者のデータ・ブロックを使用するが、その武器に毒は塗られていない。さらに、彼は酒によって毒状態となっており、すべての攻撃が不利となる。よって、急所攻撃の特性は使用できない。最後に、合計12点のダメージを受けた後、最後の一撃で彼は後ろによろめいて床に倒れる。

ロールが倒れると、彼は床にうつ伏せになり、哀れな親指を立てる。彼の荷物であるブランデーの大ビンがキャラクターたちの足元に向かって転がっていく。彼は「小切手を送ってある」とうめき声をあげ、意識を失う。キャラクターたちがこの冒険を終えてアイスブレイカー号に戻ると、彼らはそれぞれ5gpの料金を部分的な送料として支払われる。

ヴァニファー

ヴァニファーは、燃える元素邪霊の王子であるアイミックスを崇拝する「永遠の火」のカルトの元リーダーである。彼女のカルトは「Princes of the Apocalypse(未訳)」の事件で完全に崩壊したが、とある冒険者たちの慈悲によってヴァニファーは救われた。彼女は懺悔のため、氷雪の北方へと旅立つのだが、その旅の助けを求めている。

ヴァニファーを見つけるには、ラスカンの中心にあるイラスクの廃墟へ向かう必要がある。これらの廃墟へ突入するキャラクターは、迷路のような廃墟を迷わず進むために、DC18【判断力】〈生存〉判定を成功させなければならない。失敗すると、彼らは4体の徘徊するスケルトンの小集団に襲撃される。この戦闘の後、キャラクターたちは数分ほどの探険でヴァニファーを発見できる。彼らが到着したら、現場の状況を設定するために以下を読んだり、言い換えたりする。

曲がりくねった廃墟の片隅で、簡素な焚き火の前にティーフリングが座っている。彼女が着ているローブは、かつては立派だったであろうが、今ではぼろぼろになって汚れている。君たちが近づくと、彼女は不機嫌そうに君たちを見上げ、分厚い布でしっかりと包まれたダガーを差し出す。

ヴァニファーの計画は、レゲド氷河へと旅して、元素邪霊のレジェンダリー・ダガーであるティンダーストライクを永遠に葬ることだ。彼女はダガーをできるだけ自分から遠ざけたいと考えている。なぜなら、その圧倒的に邪悪な力が彼女の意志を打ち砕き、自分がしなければならない善行ができなくなるのではないかと恐れているからだ。そこで登場するのがキャラクターだ。

彼女は荷物を彼女自身に届けて欲しいと考えているのだ。彼女は一人でレゲド氷河まで旅をするので、キャラクターたちにそこで彼女自身に会うように頼む。彼女は料金の一部を前払いとして、それぞれのキャラクターに5 gpを払う。

“黒蜘蛛”ネズナル

“黒蜘蛛”として知られるドラウのウィザードは、かつてファンデルヴァー協定を結んだドワーフとノームによって作られた太古の鉱山に魔法の力を求めた(「ファンデルヴァーの失われし鉱山」を参照)。”黒蜘蛛”は数年前にファンダリンの地下洞窟で敗北したものの、何とか闇の中に逃げ込み、アンダーダークで依然として邪悪な計画を続けている。彼はブレイガン・デアースの活動の噂を聞きつけラスカンに現れ、北方の古い仲間に手紙を送ろうと考えている。

“黒蜘蛛”を見つけるには、吹きさらし海岸の灯台の上へ向かわねばならない。彼は荷物を灯台の上に載せ、手すりに手を乗せて、凍った海を眺めて待っている。キャラクターたちが灯台に向かう途中、単に金を求める強盗に襲われる。この4体の山賊は、人間、ハーフエルフ、ゴブリンが集まっている。もしキャラクターたちが、この怪しい波止場の周りにトラブルの気配を感じた場合、揉め事を避けるためにこっそり通り抜けようとするかもしれない。DC10の集団【敏捷力】〈隠密〉判定で成功したパーティは、これらの盗賊たちを完全に回避する。

彼らが灯台に到着したら、現場の状況を設定するため以下を読んだり、言い換えたりする。

ダーク・エルフが高い灯台の柵に手をかけて、海洋を懐かしそうに眺めている。北風が彼の白い髪をはためかせる。彼は先端に蜘蛛の彫像を乗せた樫の杖を持ち、小包を小脇に抱えている。

“黒蜘蛛”の願いは、ファイアーシアに潜伏している昔の共犯者に小包を送ることだ。彼はまるで舞台役者のように自分本位に話をする。DC 13【判断力】〈看破〉判定に成功したキャラクターたちは、ファイアーシアの友人に荷物を届けたい思いのあまり、彼の声に不安が混じっていることがわかる。彼の荷物は謎めいた暗号で書かれたシンプルな手紙で、地下共通語とドラウ言語に対応するいくつかの奇妙な記号が刻まれている。”黒蜘蛛”は料金の一部を前払いする。それぞれのキャラクターに5gpを与える。

結末:アイスウィンド・デイルへの出航準備完了

キャラクターたちが3つの荷物を集めたら、それらをアイスブレイカー号に積載せねばならない。この雄大な二本マストの帆船は、大変役に立ってくれることだろう。船は彼らとクルーのためのかなり十分なスペースがある。この大帆船が中心となってさらなる遭遇シリーズが続く予定だ!キャラクターたちは、アイスブレイカー号で安全なベッドと暖かい衣服にありつける。ラスカンを出発して何週間も、快適な旅ができる。

アイスブレイカー号がラスカンを出発し、地平線に向かって北に向かう場面は、セッション終了の絶好のタイミングとなるだろう。この先には沢山の寒い冒険が待ち受けているぞ! しかし、このエピソードを不吉なクリフハンガーで終えたいのであれば、船が海岸に沿って北上し始める日の夜までを描写するとよい。眠りに落ちたすべてのキャラクターに、【判断力】〈知覚〉を行わせる。最も高い結果を得たキャラクター が目を覚ましたものとし、次の文章を読み伝える。

船室の外で船からなにかを海に投げ捨てたかのような水しぶきの音が聞こえる。君の部屋の窓から、水に何かが沈んでいくのが見える。君はそれを一瞬見ただけだが、人間の体ほどの大きさをしていた。視界の隅に、船の甲板の縁を覗き込む人影が見える。のぞき窓からちょうど10ftほどの位置だ。その頭が窓の方に向き、君と目が合う! すぐにその人影は、船の端から離れて視界から消えた。

次回の冒険をお楽しみに。