パート6:テン・タウンズへの道

3つ目の配達

この冒険におけるキャラクターたちの主な目的は、アイスウィンド・デイルのテン・タウンズの一つであるブリン・シャンダーの受け取り主に小包を届けることだ。彼らはラスカン・デリバーズのメンバーであり、フェイルーン北部の危険地帯に荷物を届けることを誓っている。幸運なことに、今回の配達は、混乱したエレメンタルや恨みのある暗殺者と対決した以前の配達とは異なり、もともとの危険を孕んではいない。だが、それはトラブルがないというわけではない。キャラクターたちはハンデルストーンの町を出発するが、アイスウィンド・デイルへの道は必ずしも快適というわけではないのだ。

このシリーズの最初の遭遇で、キャラクターたちは緋色のマッカスというティーフリングから小包を受け取った。マッカスは秘術団と呼ばれる有名な魔法使いグループのメンバーで、特にマッカスは竜の伝説に魅了されている。彼女は魔法で封印された金属製の箱をキャラクターたちに渡した。それには竜のアーティファクトが含まれていると彼女は主張しており、それを彼女の同僚で現在はテン・タウンズの法律から隠れ住むはぐれ者ラグメルに届けるよう彼らに頼んだ。

ラグメルは、ブリン・シャンダーという町にいる。この居住地は、テン・タウンズを構成する十の集落の中で最大の集落であり、また、地域の最南端にある集落でもある。これは、街道を通るキャラクターが最初に到着する街であることを意味する。ブリン・シャンダーについては「Storm King’s Thunder(未訳)」で詳しく説明されており、テン・タウンズについては「アイスウィンド・デイル:凍てつく乙女の詩」で詳しく説明されている。

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テン・タウンズへの道

ハンデルストーンからテン・タウンズへの旅は、危険な極地を約50マイル北に行く旅である。「テン・トレイル」を通っても、旅は困難な道のりであり、陸路の旅は這うほどに遅いものとなる。キャラクターたちは1日に12マイルしか進むことができず、4日間の旅となる。

このセクションでは、順番にプレイするよう設計された4つの小型遭遇が含まれている。この冒険をより大きくしたい場合、「ザナサーの百科全書」から低レベル向けの極地遭遇テーブルを用いて遭遇を更に増やすとよい。旅では毎日1回の短い遭遇がある。このため、キャラクターは完全に休息をとることができ、各遭遇の開始時で完全なヒットポイント、ヒットダイス、およびスペルスロットを有する。このため、各遭遇は、危険のないロールプレイのシーンか、完全に休息した2lvキャラクターの限界を試すようなシーンのどちらかになっている。

ハンデルストーンを離れる際には、前回の冒険で街の滞在場所を提供してくれたショートヘルム一家に別れを告げるロールプレイの機会を与えるとよい。以下を読んだり言い換えたりして、ハンデルストーンを出発する場面を設定する。

君たちがテン・トレイルを北に進むにつれて、ハンデルストーンの街は遠くの背後に消えていく。ハンデルストーンの人々曰く、悪天候に捕まりさえしなければ、4日間の旅になるそうだ。君たちの行く手には道が伸びている。空は灰色に曇っており、地面は雪で白く染まっている。

キャラクターたちが道を旅する間、会話をする機会を与えてもよい。もちろん、必ずしもそうする必要はない。DMである君の仕事は、旅を続けることだ。トラブルがない旅を面白く魅力的にするのは、非常に難しい。特にキャラクターが道に沿って進んでいる場合は更に困難だ。注目すべきものがあるなら、それを描写し、キャラクターと自由にインタラクションを取らせよう! しかし、周囲に何もない場合には、その日の旅を一言で描写してしまったほうが、特徴のない雪道を長々と記述するよりよい。旅の間、場面ごとに描写を行うなら、次の内容を読んだり言い換えたりすること。

「君たちは荷物をまとめて、道に戻る。君たちは北へと向かう。激しい風の音が耳を満たす。単なる風であることを願おう。」

単に音読をしているだけのように思われぬよう、移動するたびに少しずつ違う文章を即興で作るべきだろう。

初日、探険遭遇:足跡の追跡

この遭遇では、キャラクターたちはぼろぼろの荷車と、そこに宝物が積まれていたことを示すメモ、そして先へと続く一連の足跡を発見する。キャラクターたちが宝物を見つけたいと望むなら、一行は雪原を迷わずに進むため、いくつかの技能判定に成功せねばならない。もちろん彼らが望むなら、この遭遇を無視して旅を続けることもできる。

次のテキストを読んだり、言い換えたりして、シーンを設定すること。

正午過ぎ、道の傍で、ぼろぼろの荷車に出くわした。荷車から2組の足跡が雪に覆われたモミの木立の中へ続いている。

荷車の調査。この荷車は、4人を運ぶのに十分(積み荷や物資で満たされていれば、それ以下)な、木製の大型馬車だ。DC 12【知力】〈捜査〉判定を成功させたキャラクターたちは、荷車の中に「配達予定:ブリン・シャンダーの両替商に金貨100枚」と書かれたぼろぼろの手紙を発見する。他には1週間分の保存食があるが、それ以外に価値あるものはない。

足跡の追跡。荷車から2組の足跡が並んで森へと続いている。1つは人型生物の靴の足跡、もう1つは馬の蹄の足跡だ。DC12【判断力】〈生存〉判定を成功させたキャラクターは、途中で人型生物の足跡が消えており、おそらく馬に乗ったのであろうと推測できる。足跡を追ってモミの森に入ることができる。

終点。キャラクターたちは、足跡をたどって森の中に入り、半マイルほど進んだところで、無惨な光景を目にする。ハーフエルフの男と馬の死骸が半分食べられた状態で、凍りついている。雪にはウルフの足跡が残っている。男は鉄の金庫を抱えているが、鍵はない。林を1時間捜索するキャラクターは、DC15【判断力】〈知覚〉判定を行う。成功すれば、鍵を発見する。もしくは、盗賊道具でDC15【敏捷力】判定を成功させることで解錠できる。金庫の中には予想通り、ウォーターディープで鋳造された金貨が100枚入っている。

2日目、何も遭遇はない

テン・トレイルを進む2日目のキャラクターたちに、イベントは何も発生しない。代わりに、「ザナサーの百科全書」の低レベル向け極地遭遇テーブルから別の遭遇を挿入してもよい。

3日目、戦闘遭遇:獣使いの怪物

この遭遇では、キャラクターたちはオーガの狩人とその動物の相棒であるセイバートゥースト・タイガーに強襲される。パーティーはこの遭遇を回避できない。

次のテキストを読んだり、言い換えたりして、シーンを設定すること。

君たちは一日中、途切れることなく旅を続けた。夜の帳が落ち、そろそろキャンプの準備をする時間だ。突然、平和な旅の日は、笛の音と獣の雄叫びによって中断された!ジャヴェリンが空を切り裂き、巨大なセイバートゥースト・タイガーが君たちの中に飛び込んだ!

グレルドーンという名の利口なオーガと、その動物の相棒デラークは、雪の中に隠れていた。受動【判断力】〈知覚〉の値が14以上でないキャラクターたちは不意打ちされ、戦闘の最初のターンに行動できない。

地形と戦術。オーガのグレルドーンは、道路の西20フィートにある高さ20フィートの崖の上に立っている。彼女は崖の上からジャベリンを使って攻撃し、動物の相棒は下で大暴れする。5本のジャヴェリンを持っており、すべて投げ終わるとグレートクラブを手にして崖を降りる。デラークのセイバートゥースト・タイガーは食べやすそうな鎧を着ていない者と軽装鎧の者を最初に攻撃する。このコンビは利口だが、攻撃を一点集中するほど洗練されてはいない。彼らは可能であれば常に異なる標的を攻撃する。

怒りと退却。動物の相棒が殺されるとグレルドーンは怒りの声をあげ、すぐに崖を下ってデラークを殺したクリーチャーに襲いかかる。その後、相手のうち一人が死ぬまで襲い続ける。その後、彼女は相棒の死体を回収して逃げる。グレルドーンが最初に殺された場合、彼女のサーベル・トゥースの相棒はそうした忠誠を示さずに逃走する。離脱アクションを行い丘の方へ逃げていく。

財宝。グレルドーンは、金の彫刻が施された青銅製の日時計をネックレスとして身につけている。これは50gpの価値がある。

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4日目の社会遭遇:テン・タウンズでの配達

この遭遇で、キャラクターたちはブリン・シャンダーの町に到着する。ラスカンに比べると、この町に何ら特別なものはないが、アイスウィンド・デイルで最も栄える居住地である。マッカスの荷物に書かれた住所には、ケルビン・コンフォートと呼ばれる宿が記載されている。ケルビン・コンフォートはグッドミードの街由来の特別なミードを提供している。その名もフレイムベアーズ・ファイアブランデーだ。

「アイスウィンド・デイル:凍てつく乙女の詩」のイベントによって、邪悪な魔法がアイスウィンド・デイルの空を暗く染めている。これらの出来事はまだ大事になってはおらず、ブリン・シャンダーでの生活はいつもどおりだ。寒く厳しい生活だが、楽しみがないというわけではない。

次のテキストを読んだり、言い換えたりして、シーンを設定すること。

テン・タウンズの最南にある最大の都市ブリン・シャンダーの壁が君たちの前に現れる。この要塞化された交易所はアイスウィンド・デイルへの入り口であり、風の吹きすさぶ丘の上に建っている。壁の上から衛兵が君たちを見つめる。マスクや毛皮で覆われた帽子を身に着けており、彼らの表情をうかがい知ることは出来ない。それでも彼らは門を開け、君たちに手を振って招き入れた。

テン・タウンズで配達する荷物は1つだけである。緋色のマッカスという名前のティーフリングのウィザードから受け取った、ドラゴン・アーティファクトの類が入った鉄の金庫だ。この荷物は”はぐれ者”ラグメルという人物に向けたものであり、マッカスのメモにはケルビン・コンフォートの宿屋の主人であるオグデンを訪ねるよう書いてある。

宿泊場所が必要になることもあり、キャラクターたちが「ケルビン・コンフォート」に向かうと、店内は旅行者やキャラバン商人で満ちている。門をくぐったときの冷ややかな対応に比べると、店内の雰囲気は活気がある。店の片隅で1人のバードが陽気な歌を演奏し、常連客が曲に合わせて踊っている。宿屋の主人はオグデン・フレイムベアードという名のドワーフで、ユーモアはあるが短気な性格だ。

オグデンとの会話。オグデン・フレイムベアードは”はぐれ者”ラグメルの友人で、彼に危害を加えようとする者たちから彼を匿っている。そのため、ラグメルを訪ねてきた者に対しては、疑いを持って接する。DC 13【魅力】〈ペテン〉または〈説得〉判定を成功させたキャラクターは、ラグメルの部屋に案内するよう彼を説得できる。ただし、オグデンを脅すような試みは必ず失敗し、ドワーフは怒り、キャラクターに宿から出るように言いはなつ。

キャラクターたちがこのように外に追い出された場合、ラグメルと会うために別の方法をとらねばならない。例えば、変装して忍び込み、ラグメルが夕食に現れるのを待つ、などの方法がある。

“はぐれ者”ラグメル。“はぐれ者”ラグメルは、浅黒い肌と広い肩幅のヒューマンで、とある秘密を持っている。彼は”中立にして善”のワー・ポーラー・ベアであり、アイスウィンド・デイルの凍土を旅し、弱い旅人たちを守ったり、残酷な人々を惨殺したりしている。彼の自警団活動はしばしばテン・タウンズの警察官とトラブルになる。そして、彼はケルビンのコンフォートで「落ち着く」のを好んでいる。

ラグメルが緋色のマッカスと出会ったのは、数年前、オヤヴィガトンというドラゴンの氷山の住処への旅の途中だった。旅から戻った後、氷山の住処で見つけた白金で作った小さな牙を友情の印としてラグメルに贈った。彼は今ではネックレスとしてそれを身につけている。マッカスが彼に小包を送ったのは、オヤヴィガトンに関する秘術団の調査が進み、黄金で作られたホワイト・ドラゴンの頭蓋全体が発見されたからだ!それにはある種の呪文が付与されており、マッカスは喪失した歯を黄金の頭蓋に戻すことで、ある種の眠っている魔法を解放できると考えている。

ラグメルへの配達。ラグメルは慎重だが、お人好しで訪問者に興味をもつ。特に、彼の親友マッカスと関係のある者にはことさら興味を持ち、彼女の特殊な鍵箱に興奮する。彼がそれに触れて箱が勢いよく開くと、驚きで大笑いする!接触で開く呪文だったのか、マッカスがこっそり指紋を取ったに違いないと呟く。彼がこう言うときの表情は、驚きと親しみと穏やかな気遣いが入り交じった曖昧なものだ。

箱の中には、猫の頭蓋くらいの大きさをした白金で作られたドラゴンの髑髏が入っている。ラグメルはそれを見て困惑した表情をする。受動【判断力】〈知覚〉の値が14以上のキャラクターは、彼のシャツの深い襟元から、金色の歯のペンダントがその毛深い胸に下げられているのを見つける。そうでなければ、彼はしばらくしてからそれを思い浮かべる。彼は大きな指で首のネックレスから小さな歯を繊細に摘み、それを髑髏の開口部に差し込む。髑髏は彼の手の中で甲高い声を上げて震えると、彼の手を離れ、その場で空中浮揚する!髑髏の眼窩に2本の小さな白い炎が灯り、その口が開くと荒々しい声で喋り始める。

「おい、いったい何なんだ。俺の歯で何をして遊んでるんだ? 俺が偉大で恐ろしいってことを教えてやる・・・ああ、なんてこった。今の俺は浮いてるだけの髑髏じゃねえか、ん?」

この髑髏はカルダーネティラ(略してカル)というエインシャント・ホワイト・ドラゴンで、約2000年前に冒険者に殺された後、その魂がなぜかこの金の彫刻の中に閉じ込められた。髑髏はオヤヴィガトンの住処の宝庫で保管されていた。今再び目覚めたものの、かつての強大な肉体と魔力を失ったカルは、家猫程度の力と気質を持っている。髑髏は地面から30フィートまで空中浮遊でき、40フィートの移動速度で空中を浮遊できるが、非戦闘員である。彼女はかつてのアイスウィンド・デイルの地について信じられないほどの知識を持っているが、その知識は2000年ほど古くなっている。

ラグメルは、この気の強い不真面目なドラゴンスピリットの登場を笑う。彼は、アイスウィンド・デイルを旅するキャラクターたちに、彼女を連れて行くことを勧める。「こいつは気性が荒いようだが、この北方の地でそうでない奴なんていないさ。」と彼は笑う。彼はキャラクターたちにラスカンに戻るまでの間、カルの安全を守るよう忠告する。

「マッカスはこいつが無事に戻ってきてほしいはずだ。それにこいつとドラゴンを結びつけようとする誰かが悪さをすれば、恐ろしい存在になる可能性がある。」

結末

ラグメルは仕事達成の報酬としてキャラクターに5gpずつ支払う。彼はキャラクターたちに今日という日がより面白くなったことに感謝し、ここでの出会いについては黙っておくように、そして、ラスカンに戻ったらマッカスによろしく言うように頼む

この冒険が終わると、キャラクターたちは3Lvに進む。経験値制を採用している場合、代わりにマイルストーン制によるレベリングを使用することをお勧めする。これにより、キャラクタは、将来の冒険に対処できるだけのパワーを維持できる。