パート9:ヴァニファーの後悔

最後の配達

これは、ラスカン・デリバーズがこのシリーズで行う6回目で最後の配達である。この奇妙な依頼は、かつて「Princes of the Apocalypse(未訳)」で英雄たちが打ち破ったエレメンタルカルトの1つ、「永遠なる炎」のカルト教団の前リーダー、ヴァニファーからのものだ。この非公式の設定では、ヴァニファーはデサリン谷で冒険者たちに敗北した後、一命をとりとめ、教団を解体した。ラスカンでは、元素邪霊の王子アイミックスを物質界に呼び出すレジェンダリーダガーのティンダーストライクをキャラクターたちに渡した。

彼女は、邪悪な火の王子を再び世界に呼ばぬよう、この邪悪なダガーをレゲド氷河に投げ入れようと計画している。ダガーをラスカン・デリバーズに渡したのは、ダガーの邪悪な力が彼女の判断を圧倒する可能性を恐れたからだ。そして今、デリバーズは彼女に会いに氷河の指定された地点へと向かい、このサーガに終止符を打つのである。

この冒険が終わった後、キャラクターたちはそのまま「アイスウィンド・デイル::凍てつく乙女の詩」へ移行できる。しかし、代わりにラスカン・デリバーズのメンバーとして遊び続けたいと思う場合もあるかもしれない!君はこのコンセプトに基づいて、キャンペーン全体を作り上げることができる。ラスカン・デリバーズをフェイルーンのどこに呼びだして、危険な配送をしようか?ハイ・フォレストか?アノーラック砂漠か?どんな怪物たちが、ラスカン・デリバーズの危険な探索を脅かすのだろうか?

レゲド氷河への旅

この冒険はこのテン・タウンズから始まる。ブリン・シャンダーは、馴染みのあるNPCがいる大型の町であり、キャラクターたちが休息し、回復するのにちょうどいい場所である。キャラクターたちは、このセッションの最初の部分を旅の準備に費やしたり、このシリーズの第6回で出会ったNPCと交流したりできる。

ヴァニファーの荷物には、ヴァニファーが作ったブリン・シャンダーからレゲド氷河のキャンプ地までの簡単な地図が入っている。地図には、ヴァニファーが短剣を投げ入れる予定の氷河の裂け目が記されている。

移動の準備ができたら、ブリン・シャンダーからレゲド氷河までは、アイスウィンド・デイルの雪原を通って約3日かかる。危険な土地だが、まだ凍てつく乙女オーリルの邪悪な影響力は及んでいないため、怪物とは遭遇しない。次の遭遇の前にキャラクターの力を削りたい場合、「ザナサーの百科全書」から低レベル極地遭遇テーブルの使用を検討するとよい。

社会遭遇:ヴァニファーの後悔

この遭遇は3Lvキャラクターのパーティに適している。

この遭遇は、キャラクターたちがレゲド氷河にあるヴァニファーのキャンプに到着したところから始まる。この遭遇では、キャラクターたちはティンダーストライクの邪悪な意志を断ち切り、ヴァニファーはダガーをレゲド氷河に投げこんで、その炎の力を弱めねばならない。もしキャラクターがこれまでの冒険の中でティンダーストライクを使っていたとしたら、この遭遇はより難しいものとなるだろう。 なぜなら、このダガーは同調したことのある人物に対して邪悪な影響力を行使しようとするからである。

次のテキストを読んだり、言い換えたりして、シーンを設定すること。

君たちは冷たい風と雪に顔を覆われながら、凍った斜面を徒歩で登っていく。坂を上りきると、次の高台に真紅の旗がはためき、その後ろに細い煙が空に向かって巻きついているのが見える。君たちは丘を登り、旗にたどり着く。旗の近くの焚き火の前には、輝く黒髪に赤い肌のティーフリングが座っている。彼女は輝く金色の目で君たちを見て、立ち上がる。

「よくぞ来てくれた」

彼女は厳かに言う。

「この旅を引き受けてくれて感謝する。ここは・・・とても寒いな」

彼女は肩越しに、50フィートほど離れた氷河の巨大なクレバスを見る。

「この悲しい物語に終止符を打ち、前に進む準備はできている。あれは持ってきたのか?あの短剣、ティンダーストライクを?」

ヴァニファーは冷淡で、気難しく、不機嫌な性格だ。普段は陽気で皮肉も言うが、アイスウィンド・デイルは彼女に優しくはない。ヴァニファーにティンダーストライクを氷河に投げ入れる理由を尋ねると、彼女は自分の過去と使命について詳細に説明する。

話し終わると、ヴァニファーは氷の地割れの方を向く。

「デリバーズにもう一つ頼みたい。ティンダーストライクの精神を支配する力は凄まじい。そんなに簡単に武器を捨てられるとは思えないのだ。」

投げ捨てられたダガー

キャラクターたちが氷のクレバスにティンダーストライクを投げ込もうとする(あるいは破壊するか封じ込めようとする)とき、DC15【魅力】セーヴィング・スローを成功させなければならない。さもなくば、短剣の魔力によって、ダガーを文明社会に戻そうとしてしまい、それを阻止しようとする者を殺すよう強制される。ティンダーストライクに同調したことがあるクリーチャーはこのセーブが不利になる。こうして強制されたクリーチャーはティンダーストライクを使って攻撃をする。呪文の発動はできない。この精神強制は、ダガーを手にする間ずっと続き、もしダガーが強制的に奪われた場合、次のターンの終わりまで朦朧状態となる。各キャラクターはアクションを用いて【筋力】対抗判定に勝利することで、他のキャラクターからティンダーストライクを奪うことができる。

それぞれのターン開始時に、ティンダーストライクによって他者を殺すよう強制されたキャラクターは、DC20【魅力】セーヴィング・スローを行うことができる。成功すれば、彼らは次のターン開始時まで朦朧状態となる。朦朧状態が終わると、次の24時間の間、キャラクターはダガーの邪悪な影響力に完全耐性を有する。

セーヴに失敗すると、アイミックスの低いひび割れた声がダガーを通して聞こえる。元素邪霊の皇子は、次のような不吉な言葉を伝える。

ヴァニファーがダガーを氷の中に投げ込もうとするところから遭遇が始まる。彼女はかつてティンダーストライクと長きにわたって同調していたため、自動的にこのセーヴィング・スローに失敗し、伝説的抵抗力の特徴を使用してセーヴを成功させることはできない。彼女はダガーを奪おうとするキャラクターがいると、明らかに正気ではない様子で攻撃する。前述のように、ヴァニファーはキャラクターを攻撃するよう強要されている間には呪文を唱えることができない。加えて、彼女はアイミックスに堕ちぬよう心を集中しているため、攻撃は不利となる。

ティンダーストライクがクレバスに投げ入れられると遭遇は終了する。次の内容を読む。

ダガーは地割れの氷壁にぶつかり、哀れな音を立てて寂しく視界から消える。その小さな音が極風にかき消されると、ヴァニファーはため息をつく。「ありがとう」彼女は弱々しく言う。「それから・・・申し訳ない。テン・タウンズまで同行させてもらえないか?そこに金がある。無事に戻ったら支払いをしよう。」

結末:暗闇の前の炎

テン・タウンズへの帰路は凍えそうな寒さだが、特筆するようなことはない。ヴァニファーはケルビン・コンフォートに部屋を持っている。 ケルビン・コンフォートは、キャラクターたちが初めてブリン・シャンダーを訪れたときに立ち寄った立派な宿で、彼女は各キャラクターに10gpの郵便料金をそれぞれ支払う。また、ティンダーストライクの邪悪な力を解き放った手助けの礼として、魔法のアイテムを贈る。このアイテムは、永遠なる炎の教団のシンボルをかたどった金色のアミュレットだ。彼女はこれ以上、このアイテムを持ち続けたくないと言うが、嫌な記憶を呼び起こすのを別にすれば、このアイテムは役に立つ魔法の小道具だ。このアミュレットを身につけた【知力】5以上の生物は、自由に初級呪文のプロデュース・フレイムを発動できる。

次は・・・凍てつく乙女の詩!

これで「アイスウィンド・メール:特別な手紙」シリーズは終了だ!9月15日からは、凍ったフェイルーン北部を舞台に「アイスウィンド・デイル:凍てつく乙女の詩」の冒険を続けることができる。君のプレイヤー達のキャラクターは、この遭遇シリーズの最後におそらく3~4Lvになっているはずで、「アイスウィンド・デイル:凍てつく乙女の詩」のコンテンツについて「レベルを上げすぎている」ことを意味する。書籍を最大限に活用する方法については、いくつかの解決策がある。どのオプションを選択しても、2年間の時間の飛びを考慮する必要があるかもしれない。 なぜなら、冒険が始まるまでの約2年間、オーリルの永遠の夜の呪文が空に織り込まれているからだ。キャラクターたちは南のラスカンに戻って2年間、南の土地で配達をしてからアイスウィンド・デイルに戻ってもよいし、雪と暗闇のテン・タウンズに2年間住みつづけてもよい。

「凍てつく乙女の詩」は、Lv1から始まる超大型D&Dアドベンチャーだが、そのアドベンチャーはほぼ完全にモジュール式になっており、プレイヤー達のニーズに合わせて新しいアドベンチャーを追加、削除、挿入できる。もしよければ、テン・タウンズでの低Lvアドベンチャーをスキップして、第2章からキャラクターを登場させて、彼らがアイスウィンド・デイルの廃墟に飛び出すようにすればいい。

ゲームプレイの観点から見て、これは完璧に機能する。物語の観点から見ると、プレイヤー達がテン・タウンズの小さなアドベンチャーをスキップしたことで、物語の後の主要な出来事についての重要な伏線を学ぶ機会を失うかもしれない。もう1つの選択肢は、キャラクターたちを外から来たヒーローとして町で簡単な遭遇を行い、野原に出る前にテン・タウンズの問題を簡単に解決させてしまうことだ。彼らはこれらのアドベンチャーからあまりXPを得ることはないだろう。 ひとたび文明圏を離れても、彼らのレベルが高すぎるということはなくなる。

第3の方法は、もう少し手間を必要とするが、キャラクターに十分な脅威度のチャレンジを与え、必要とするすべての物語の詳細を与え、レベルが高すぎる状態を防ぐということだ。D&D Beyond Encounter Builderを使用して、キャラクターのLvに一致するように冒険初期の難易度を調整するとよい。このツールでは、モンスターを追加・削除して、テン・タウンズの初期の低Lvアドベンチャーの難易度を上げることができる。また、パーティの規模・強さによって遭遇の難易度がどのように変化するかが表示されるため、既存の遭遇を変更するのに最適だ。

そして、この方法を完遂させるべく、第2章に到達するまで、(Encounter Builderを使用してパワーを増加させた後)遭遇によって与えられたXPを通常の値の25%に縮小する。