バンダーホブの魔女団

D&Dを遊ぶ皆さん、ハッピー・オクトーバー! D&Dセッションで使える不気味な遭遇をもう一つ用意したぞ。ハロウィーンを続けていくとしよう。

先週、君たちは幽霊のトウモロコシ畑(Haunted Cornfield)へと旅し、執念深い殺人スケアクロウと戦いを繰り広げたはずだ!今週はシンプルなダンジョンを舞台に、ハグの魔女団と奴らが作り出した悪夢のような産物に立ち向かってみるとしよう!

このミニ・アドベンチャーは公式のものではないし、アドベンチャーズ・リーグで認可されてもいない。けれども、君の身内でなら、きっとうまく使えることだろう。ダンジョンマスターを楽しんでくれ!

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バンダーホブの魔女団

レベル5キャラクター向け

夏が終わり、曇天と荒れた海の季節がやってきた。しかし、この物語の舞台となる小さな沿岸の漁村には、落葉とともに、もっと恐るべきものがやってきてしまった。

海沿いの村落は世界各地にある。フォーゴトン・レルムならば、チャルトの集落イーシャウだ。ここは魂を食らう墓のイベントで破滅したが、将来的には再建するかもしれない。

ネヴァーウィンター北にあるラスト港(Port Llast)も該当するし、アンダーダークのダークレイク(Darklake)のような地下湖のほとりの、人知れぬディープ・ノームの村でもよい。

(もしくは私の自作アドベンチャーThe Temple of Shattered Mindsに出てくるエルフの集落Alkai Torもよい。このひどい村にはもう十分かもしれないけれどね。)

トードフィッシュ姉妹の伝説

3人のハグが、海から生まれ、磯を這い登り、岩場へと流れ着いた。それはまるで珍しいうろこのついた魚のようだったが、人型生物の体をしていた。

彼らの髪はわかめのような緑褐色で、彼らの肌には青銀色のうろこが煌めいていた。呼吸するその口にはおぞましい鋭い針のような歯がのぞき、滑らかな岩肌を登ろうと水かき指を打ち付けていた。迫る波を乗り越えようとして、ハグの一人が岸に打ち上げられたトードフィッシュ(ふぐ)を粘性の手でひっつかんだ。後にそれで食いつなぐことになる。

トードフィッシュ姉妹が荒れ狂う海を這い上がってから時は過ぎ、その浜の嵐は過ぎ去ったが、この魔女団を取り巻く伝説は続いていった。彼女らは人間のような見た目で、実際人間の皮を被っていたが、しかし別の存在であった。彼女らは愛と美を嫌う不浄なるフェイであり、それらを撲滅するため――憎悪と醜悪でそれらを堕落させるためなら、どこにでも足を運ぶつもりだった。

シーハグの三人組は地上世界のはじめての夜を、みすぼらしい洞窟で身を寄せ合って過ごした。はじめはあのトードフィッシュの肉を食い、小削ぎ、その骨と筋はハグたちの鋭いカミソリ歯のようになってしまった。すぐに3人のハグは食事について口論となり、ひどい戦いになってしまったが、物音を聞きつけた愚かな漁師が岸の方から調査にやってきた。彼がその光景を目の当たりにした途端、3人のハグは男に飛びかかり、その四肢をばらばらに引き裂き、遺体を食べてしまった。その連携の強さを実感したことで、3人のハグは漁師とトードフィッシュのきれいな骨にかけて誓った。トードフィッシュ三姉妹の魔女団が死ぬ瞬間までともにあり続けることを。

それから半世紀が過ぎ、三人のハグは自らをシスター・ソデンブロウ(濡れ眉)、シスター・ケルプサッカー(昆布好き)、シスター・ソルトガズラ(塩呑み)と呼ぶようになった。また、姉妹らは海岸中を旅し、場所が冒険者に知られたときは洞窟に潜んでその攻撃の波をしのいだ。彼女らはどこへ旅するときも、はじめて上陸した夜に食べたトードフィッシュと漁師の骨を持ち歩いた。そして同じく魔法で防腐処理をした魚と漁師の目玉をも持ち歩いていた。しかし、ハグたちはいつしか走り疲れてしまった。彼らは人間を憎み、鋼の刃から逃げ続けることをも憎んだ。彼らは恐ろしい怪物を作り出し、自らの身は自ら守ろうと決めた。

盗難

一週間前、ハグたちは3つの重要なことをした。まず、彼らは男の目玉からハグ・アイ(モンスターマニュアル参照)を作り出した。この魔法の奇品は、トードフィッシュ姉妹に遠隔の視界を与えるものだ。この奇品を首に下げ、シスター・ソデンブロウは幻術で自らを醜い老爺の姿に変え、そうして街へと出かけた。そこで、彼女は一抱えの秘術のハーブと、呪術用の大鍋をマーケットから盗み出し、街を後にした。守衛が彼女を追いかけ洞窟の入口まで来たものの、ハグは洞窟の中まで逃げ込み、守衛は恐怖からそれ以上は追いかけなかった。3人のハグは洞窟に大鍋を設置し、数ガロンの海水と砕いたハーブを煮込んだ。調合が上手くいくと、彼女らはトードフィッシュと男の骨を鍋に投入し、しゅうしゅうと煮えたぎる混合物を見つめた。――そして、それはクリーチャーへと変化し始めた。バンダーホブが大鍋の中に形作られ、それは10日にわたって続いた。

その10日目がすぎ、漁村ではこの盗人逮捕に協力する冒険者を募り始めた。”老爺”は洞窟から出てこなかったため、3人の勇敢な村人が調査に向かったが、どれも帰らぬ人となった。町の人々にとって、これはすでに単なる窃盗事件以上のものだ。これはなんとしても見つけ出さねばならない、復讐なのだ。

まとめると…

冒険開始前には、以下の大きなイベントが発生している。

冒険のフック

盗人を捕まえられなかった守衛のヒメネス巡査は街を訪れた冒険者に会い、件の窃盗の話をする。そうして、50gpの報酬で依頼を持ちかける。また、盗人の隠れ家で見つけたものは何でも持っていってよいともいう。盗人たちは螺旋の洞窟を根城にしている。そこは非常に危険な洞窟として知られており、町の歴史の中で多くの探検家が非業の死を遂げてきた。

一見すると洞窟は崖下の海の中にあるのだが、潮流のため下から入ることは出来ないのだという。

彼はまた、盗人がガラスの目玉のペンダントを首に下げていたことを話す。おそらく幸運のお守りか、もしくは聖印だろうとのことだ。何の神の聖印だと尋ねられると、彼は肩をすくめて自分が信心深いわけではないことを告げる。

彼はパーティを洞窟の入口へと案内し、幸運を祈ると、不吉な警告を残して去っていく。

「俺たちは勇敢な若者を3人、この下に送り込んだんだが音沙汰がねえ。あんたらの骨がその仲間入りをしないようにしてくれよ。」

1.螺旋の洞窟の口

螺旋の洞窟の入り口はポッカリと口を開けた幅10ftの穴だった。それが風のすさぶ海沿いの崖の上に空いている。そこからおおよそ100ftほど下では、波が音を立ててぎざぎざの岩にぶつかっている。洞窟の入口からはかすかに霧が漂っている。

幅広の天然の階段が洞窟の奥へと続いている。それぞれの段は水でてかてかと光っているが、降りるのは簡単で、30ftほど螺旋状の道を潜行するとエリア2に到達する。

2.歯牙

洞窟を奥に進むにつれて、空気は徐々に湿り気を帯び、潮の匂いが強まる。通路を歩く音が虚ろに反響する。足元の石は水と海藻でぬめり、歩くたびに足元が小さくすべる。

通路は広い部屋へと繋がっていた。部屋には幅30ftほどの裂け目があり、向こう側へ行こうとする君達を阻んでいる。向こう側には下り階段への入口があるが、裂け目にはぎざぎざの石筍が並び、まるで巨大なサメの歯のようだ。

直径50ftの、石筍だらけのこの部屋は、地元の探検家からは「歯牙の間」として知られており、彼らのほとんどはここまでしか来ていない。

床は塩水でぬめりけを帯びており、この部屋で【筋力】〈運動〉判定や、【敏捷】〈軽業〉判定、激しい動きを伴う行動を行った者は、DC15の【筋力】セーヴィング・スローを行い、失敗すると倒れて伏せ状態になる。穴の5ft以内で転倒したキャラクターは、追加でDC15の【敏捷】セーヴィング・スローを行い、失敗すると穴の中へと落ちる。

“底なしの“穴は深さ70ftあり、その底はエリア3へと続いている。穴の壁から生えた石筍以外には、ロープを掛ける場所はない。石筍は10ftごとにあり、塩水ですべりやすい。ある石筍から別のものへ飛び移ろうとするクリーチャーはDC16 の【敏捷】〈軽業〉を行い、失敗すると穴の底へ落ちる。壁はでこぼこしていて登攀が可能である。壁を登攀する途中にターンを終えたクリーチャーはDC16の【筋力】〈運動〉判定を行い、失敗すると穴の底へ落ちる。

洞窟の一番奥にある扉は下り階段に続いており、螺旋状に70ft下まで降りて、エリア3まで続いている。

3.喉

この直径50ftの部屋は、壁から漏れ出した水でできた小さな滝がそこらじゅうにあり、岩にあたって耳障りな飛沫が散っている。それらは南にある別の通路へと流れ、排水されている。エリア4の怪物の世話をしていないときは、ハグたちはこの滝の近くで休んでいる。

トードフィッシュの魔女団に属する3人のシーハグ、シスター・ソデンブロウ、シスター・ケルプサッカー、シスター・ソルトガジラとはここで出会う。キャラクターがパス・ウィズアウト・トレイスやサイレンスなどを使って、よほど静かにしていない限り、歯牙の間での探索の音はハグたちにあなた方の存在を知らせる。彼女らは「みにくい心とみにくい姿」の能力を使って自らの姿を変え、冒険者たちが来る前に洞窟にやってきた3人の村人たちを醜悪な姿で投影する。ソデンブロウは体の肉をめった切りにされた肉屋の姿を取る。ケルプサッカーはフジツボのこびりついた目の死んだ海女の姿をとる。ソルトガジラは全身に醜いヒルが覆うパッデドアーマーを来た女戦士の姿を取る。

ハグたちはここにやってきた人型クリーチャーを翻弄しようとする。変装で犠牲者たちの恐怖の姿をとり、冒険者たちが怯えて去っていくことを期待している。侵入者たちが攻撃したり、防御をやめたり、逃げなかったりした場合、ハグたちは攻撃する!魔女団の一員として、3人全員が生きているかぎり強力な呪文の共通プールをもつ(モンスターマニュアルのハグの魔女団を参照。呪文セーブDC13、呪文攻撃の命中+5)。ハグの2人が殺されると、残りの1人はエリア4へと逃げる。

この部屋の北端にある通路は、登るとエリア2へと続いている。部屋の南へ下るとエリア4へと続いている。ハグが3人とも殺された場合、恐ろしいうめき声と濁った残響がこの下り階段から聞こえてくる。バンダーホブが創造主の死を感じ取ったためだ。

4.鼓動する心臓

まるで巨大な心臓が鼓動するような、不安なリズムが、この部屋へと続く通路に響き渡る。恐ろしい寒さが通路に広がり、下っていくにつれ君たちの足首を冷やす。洞窟の終わりには、25ft幅の部屋が広がっており、幽かな緑のかまどの火が部屋を薄暗く照らしている。部屋全体が高さ3ftほどまで浸水している。部屋の中央には濡れないための小島があり、そこでは巨大な大鍋が緑色の火にかけられている。部屋の奥には海へと続く通路があり、何秒かおきに大きな白波が洞窟へと流れ込む。

DC16の【判断力】〈知覚〉判定に成功したクリーチャーは、部屋入口の上部に大きな石の突き出しがあることに気がつく。――そして、なにか大きな生物がそこに座っていることにも気づく!
盗んだ大鍋でハグが作り出したバンダーホブが突き出しの影に隠れ潜み、母を殺した者たちに不意打ちをかけようと待ち構えている。

生き残ったハグがここまで逃げてきた場合、ハグは大鍋の隣で高笑いを上げてPCたちの気を引き、それから戦闘の最初のターンに部屋の奥の穴から海へと逃げる。

バンダーホブは額にハグ・アイを埋め込んでおり、生き残ったトードフィッシュの姉妹たちはここで何がおきているか見ることができる。戦闘では、バンダーホブはパーティの後ろからキャラクターを襲撃し、飲み込んでしまおうとする。それから死ぬまで戦う。部屋の別の場所にシャドウ・ステップを行うかもしれない。

バンダーホブのHPが0になっても、すぐに死ぬわけではない。代わりに、次のターンになると恐ろしい叫び声を上げ、大鍋の方へ逃げて、その中に入ろうとする。蒸気の雲が大鍋を包み、それが晴れると、鍋全体が直径1ftの鉄の椀へと縮んでいる。この魔法の容器は特殊な効果を持つボウル・オヴ・コマンディング・ウォーター・エレメンタルズである。これに合言葉を吹き込むと、これはウォーター・エレメンタルかもしくはバンダーホブを召喚できる。召喚されたバンダーホブは、ウォーター・エレメンタルの召喚と同様にカンジャー・エレメンタルのルールに従う。

部屋を調べたキャラクターは、3人の村人たちの骨と衣服が部屋に散らばっているのを見つける。

結末

村人たちがキャラクターを雇ったのは盗人に裁きを下し、大鍋を取り戻し、死んだ若者たちの復讐をするためだ。ハグを倒したキャラクターは、盗人に裁きを下し、他の者達の復讐を果たしたと言えるだろう。だが、大鍋は取り戻したとも言い切れない結末になった。なにせ、小さくなった上に魔法の器となってしまったからだ。守衛はPCに渡す50gpの報酬から大鍋の2gpを差し引く。