監視者たち
ストーンハートタワーは岩の崖にそびえ立つ。その尖った塔の頭上には霧のベールが垂れ下がっている。
かつての有力者たちは研究や計画にこの場所を使用していた。今では廃墟となり暗い空っぽの殻となっている。
崩壊しかけた石レンガに染み出ているのは、塔を腐食させる黒い腐敗であり、内部の腐敗が広がったものだ。
森から出てきた冒険者たちが見たものは、胸壁にとまった3つのガーゴイルが動き始め、数十年の停滞で翼がきしむ姿だった。
今週の遭遇は「監視者たち」。
キャラクターたちは見かけ以上の存在と遭遇する。
設定
この遭遇は、フォーゴトン・レルムやレイヴンロフトの、雨が多く、人口がまばらな沿岸地域に設定することができる。塔は海や大きな湖、例えばムーンシーやソード・コーストなどの水界を見下ろす位置にある。
ソード・コーストの巨大な地図で冒険の可能性のある場所を確認できる。「ソード・コースト・冒険者ガイド」でそのエリアについてもっと読むこともできる。
「監視者たち」は、3~5Lvのキャラクターたち向けに設計されている。
背景
1世紀前、3人の冒険者たちが財宝の噂に誘われて、秘術の塔を探索した。
そして、そこには貴重なアーティファクトがあった。それは持ち主自身の最も深い希望を見せる鏡であった。
その塔は、かつては魔道士が実験をしたり、魔法のアイテムを作ったりするための学問の場であったが、ずっと昔に放棄された。そして、まもなくその塔はメドゥサに発見された。
彼女は塔を略奪し、その恐るべき力をさらに高めることができる奈落の魔法を発見した。彼女はこの魔法で魔法の鏡を狂わせた。そうして、鏡の中の自分の姿を見た人は、代わりにメデュサの姿を見て、石化するようにした。
被験者が必要なため、メドゥサは噂を煽り、疑いを知らぬ旅人を塔に引き寄せた。実験はうまくいき、3人の冒険者たちは無意識のうちにガーゴイルに変身した。数年後、メドゥサは姿を消し、鏡はからっぽの塔に放置された。そのひび割れた表面は、塔全体に暗い腐敗を放出し、腐敗は広がり続けた。
ストーンハート・タワーのガーゴイルの衛兵は、他の人々が同じ運命に苦しまぬよう、冒険者たちを抑止するためにできることは何でもする。
メドゥサの魔法は必要か? この遭遇は「メドゥサの石像庭園」に関連している可能性がある。
遭遇のスタート
この遭遇は、冒険者たちが噂を聞いたり、クエストを与えられたりすることで始まる。推奨されるオプションは次のとおりである。
- 掲示板に、「ストーンハートタワーからアーティファクトを手に入れる冒険者たちを探している。危険な旅だが、支払いは良い。詳しくはバーまで」 と書いてある。バーテンダーは塔への大まかな地図を持っている。
- 居酒屋でパーティは酔った客の話を耳にする。 「これまでに見つけられた中で最もすごいアーティファクトが海岸線を越えて沖にあるストーンハートタワーの中にあるってよ。」
- キャラクターを手助けしてくれる仲間の一人が、自分が研究したいと思っているアイテムについて相談する。危険物と噂される鏡について、彼らはキャラクターたちに注意を促し、ストーンハートタワーという場所にあることを教えてくれる。
遭遇は森林を通る道から始まる。次の文を読みあげること。
葉のない細長い木が、風にきしんで揺れる。
かすかな霧雨が、まばらな森を切り裂く石の小道を覆う。
足の下の石はなめらかだ。徐々に木々は消えていくが、道は前に続き、水辺の深い崖に架かる石橋につながる。向こう岸には、海岸線に沿って建つ不気味な石塔がある。
橋を渡る。
橋は幅10フィート、長さ30フィートで、下の水域の上60フィートに吊り下げられており、手すりはない。崖は急で、下の水は白く泡立っている。
石橋の多くは崩壊し、浸食されている。難易度13【判断力】〈知覚〉判定で成功したキャラクターたちは、3フィート、12フィート、18フィートの位置の3点を見て、石がいくつか抜け落ちており、重量負荷をかけると危険だということがわかる。300ポンド以上の重さがその弱点にかかると、足元の石が崩れて、キャラクターたちは下の海に落ちる。落下するキャラクターは、水面に当たって6d6の殴打ダメージを受ける。これは、ゆっくり一人ずつ進んでいくか、何らかの呪文を巧みに利用することによって回避することができる。
荷重の簡略化
プレーヤーにキャラクターと装備の重さを尋ねる代わりに、2体の中型クリーチャーが一度に弱点を越えた場合に崩壊すると定義づけることも出来る。
2体の小型クリーチャーは、重量を単純にするために1体の中型クリーチャーとして数える。
キャラクターたちがタワーの入り口から10フィート以内に入ると、3体のガーゴイルがリング付きの胸壁に止まり、翼を広げる。中央のガーゴイルが一度羽ばたき、ジャイアント・イーグルを召喚する。ジャイアント・イーグルはキャラクターたちより先に橋の上に上陸し、翼を広げ、前進しようとするキャラクターたちに大声を鳴らす。
キャラクターたちが塔に向かって進み続けるか、あるいは塔に対して敵対的な行動をとると、イーグル(鷲)は戦闘を避けて飛び去っていく。
ストーンハートタワー
橋を無事に渡ったキャラクターたちは、ストーンハートタワーの外縁部に到達する。高さ60フィートの塔の基部を幅6フィートの外壁が取り囲んでいる。窓はない。
3体のガーゴイルが塔の胸壁にいる。1人のガーゴイルが塔から降り、キャラクターたちとドアの間に位置取る。砂利を散らしながら飛行し、キャラクターたちの前で金切り声を上げる。胸壁の下にいるクリーチャーは、難易度13【敏捷力】セーヴィング・スローを行う。失敗するとキャラクタは砂利の破片から1d4の殴打ダメージを受ける。他の2人のガーゴイルは侵入者を不気味に見つめ、テラン語でシンプルに「引き返せ」と言う。
ガーゴイル
ガーゴイルはテラン語しか話さない。テラン語で話しかけられると、ガーゴイルは自分たちの話を共有し、キャラクターたちに先に進まないよう警告する。そうでない場合、彼らはキャラクターたちに対して敵対的ではなく、単に彼らがタワーに入ることを阻止しようとする。
攻撃された場合、ガーゴイルは戦闘から逃れ、胸壁に退却する。
最後の手段として、彼らは自分たちの警告を身振り手振りで伝えようとする。ガーゴイルは手を振り回し、メドゥサのまねをして蛇のように頭のそばで指をくねって、鏡を見るように彼らの顔に彼らの手のひらを持ち上げる。彼らの動作はのろく硬いが、間違いなく何らかのコミュニケーションを行おうとしている。
「モンスター・マニュアル」に掲載されるガーゴイルは混沌悪であるが、これらのガーゴイルは何らかの目的のために建設されたものではなく、かつては人間である。ゴーストのように、彼らは今、タワーに縛られ続けている。
外部の石壁
塔の石壁を調べるキャラクターは、難易度14【判断力】〈知覚〉判定を行う。成功すると、キャラクターは外側の石の一部から染み出ている厚い黒い物質に気がつく。粘着性のある汚泥に触れるフィーンドやアンデッドではない生物は、1d6の[死霊]ダメージを受ける。
難易度16【知力】〈魔法学〉判定を成功させると、その物質が悪魔の血であり、アビスのクリーチャーと以前に接触した残滓であることが明らかになる。
塔の中
ストーンハートタワーは2階建てだが、2階はロフトになっていて、フロアは部分的になっている。ドアは、かつて図書館の役割を果たしていた広いエリアに通じている。
1.図書室
タワーのメインフロアには、腐って膨張した本棚が並んでいるが、それらはすべて空である。今残っているのは羊皮紙の切れ端だけだ。この部屋にあるアイテムは割れた手鏡だけである。鏡の枠は金色で錆びている。黒い膿腫が鏡から根のように枝分かれし、壁へ伝わっている。
難易度14【知力】〈魔法学〉判定で成功したキャラクターは、アイテムが呪われていると判断する。鏡や割れた破片に触れたり見たりする生きているクリーチャーは、難易度14【耐久力】セーヴィング・スローを行う。セーヴィング・スローに5個以上の差で失敗すると、すぐに石化状態になる。そうでなければ、セーブに失敗したクリーチャーは石に変わり始め、拘束状態になる。拘束状態の生物は、次のターンの最後にセーヴィング・スローを繰り返さなければならず、失敗すると石化状態になる。成功すれば影響が終わる。石化は、グレーター・レストレーション呪文やその他の魔法によって解放されるまで続く。
しかし、石化状態の人形生物クリーチャーは、24時間経つとガーゴイルになる。リムーヴ・カースを唱えると、ガーゴイルは24時間の間、石化状態の人形生物に戻る。その間にグレーター・レストレーションを唱えて、復活させることが出来る。
鏡の破壊
難易度15【知力】〈魔法学〉or〈調査〉判定で成功すると、鏡を破壊することで汚泥の拡散と腐敗を防げることがわかる。キャラクターたちは、武器や魔法で鏡をばらばらにすることで、鏡を破壊することができる。鏡はAC10および5hpを備えている。無傷の間は、その呪いは解けない。
鏡が壊れると、メドゥサの呪いのスペクトルの本質が噴出し、攻撃してくる。これは蛇頭がすべて切れたメドゥサのような姿をしている。この霊体にはデスロックのステータスを用いる。彼女は壊れた鏡をキャラクターたちに向けようとする。
代替のステータス「モルデンカイネンの敵対者大全」にアクセスできない場合は、デスロックの代わりにゴーストを利用できる。
2.階段
高さ12フィートの階段がメインフロアから2階まで続いている。階段の中央が壊れており、幅3フィートの隙間ができている。
3.実験室
2階はかつて実験室として機能していた。下のメインフロアには石の作業台がある。棚と木箱は空っぽでほこりっぽい。難易度15の【知力】〈魔法学〉判定を成功させたキャラクターは、作業台や上の天井についた黒い焦げ模様から、ここで秘術の実験が行われていたことがわかる。
難易度12【判断力】〈知覚〉を成功させたキャラクターたちは、次のように書かれた羊皮紙を見つける。字が不器用で、文字が大きい。というのも、ガーゴイルの一人が羊皮紙に書いたものだからだ。
鏡は呪われた。ここから去って、戻ってきてはならない。我々の仲間になってはならない。
結末
この物語は、危険とはいえ、冒険者たちが宝物を見つけたら終わりだ。キャラクターたちがストーンハートタワーから撤退するなら、ガーゴイルは強固に、ストイックに、塔を警戒する立場を再開する。汚泥は最終的に塔を飲み込み、それは崩れて海に入り、鏡は海の底で失われる。キャラクターたちが鏡を破壊することに成功すれば、汚泥は広がらなくなり、ガーゴイルと塔の両方が残る。
ガーゴイルは人々に警告し続けるためにここに残る。