ウォーパスの人狼
今週の遭遇は、「ウォーパスの人狼」だ。高山の森を舞台にキャラクターたちはワーウルフたちの狩りの只中に入り込んでしまう。この思いがけない遭遇で、追われていたワーベアたちは逃げることができるものの、それによってキャラクターはワーウルフの矢面に立たされる。ワーウルフたちは今夜、熊の肉を食べることを楽しみにしていたが、人間の柔らかい肉は見過ごすことはできず、彼らの群れのターゲットは変わってしまうだろう。
彼らは追撃をやめて、キャラクターに飛びつくのだ。
ライカンスロープを狩るライカンスロープ
『モンスター・マニュアル』に掲載されているライカンスロープは、物理的な武器によってダメージを受けない。ただし、それらの武器が魔法のものであるか、銀で作られたか、銀や錬金術銀でコーティングされた場合を除く。
これには、すべてのライカンスロープは他のライカンスロープの肉体武器を無効にしてしまう不幸な副作用がある。この問題には、次の2つの方法のいずれかで対処できる。
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世界を構築する要素として扱う。
もしライカンスロープが互いに危害を加えられなかったらどうなるだろう。彼らは不安定な休戦を形成するのか?彼らはいつもダメージを与えずに戦い、ロープや鎖を持ってきて、戦った敵を縛るのか?ライカンスロープは、他のライカンスロープから自身を守るために銀の武器を身につけているのか?それとも、それは危険すぎるか?代わりに、ライカンスロープ族は、銀のダガー1つを自分たちのキャンプに保持しておき、それを使って、キャンプに引きずってきた敵を儀式的に殺害するのか?
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応急処置をする。
単に、ライカンスロープの肉体武器は完全耐性を無視して[殴打]、[刺突]、[斬撃]のダメージを与える宣言をするだけだ。あるいは、ライカンスロープの肉体武器が魔法であることを宣言して、非魔法武器への抵抗や完全耐性を突破する。
今回はこの遭遇をより広く利用可能にするために、2番目のオプションを想定している。
ただし、この遭遇をキャンペーン設定に合わせてカスタマイズしたい場合は、最初のオプションを選択して、あなたのセッティング用の人狼の設定を作成をするのをお勧めする。
戦闘遭遇:ウォーパスの人狼
この戦闘遭遇は、5レベルキャラクターのパーティ向けだが、より高レベルのパーティが挑戦できるよう拡張できる。魔法の武器や、銀の武器を持たないパーティは、この遭遇がより困難になるだろう。
夜に暗い森の中を旅するなか、キャラクターたちは動物の群れの足音を聞く。枝が折れ、足跡が地面に突き刺さり、動物の苦しい声が木の中にこだまする。この遭遇でプレイヤーにもう少し情報を与えたいなら、難易度15【判断力】〈知覚〉か【知力】〈自然〉判定を行わせる。成功すると、大きな動物の集団が別の動物を追いかけている音であることがわかる。この追跡から距離を置こうとするなら、彼らは難易度17の集団【敏捷力】〈隠密〉または【判断力】〈生存〉判定で成功しなければならない。
遭遇の要約
キャラクターが近づいてくる狩りの音を聞いたときは、もう手遅れである。彼らが歩いている道は、突然、大混乱に陥る。よだれを垂らす人狼たちと、逃げまどうーー見たところ人間のーー集団に出くわす。ワーウルフがキャラクターたちと代わりに戦うことを決めると、逃げ惑う人間たちは現場からいなくなる。
なぜ人狼が無力な旅人のキャラバンを追いかけるのをやめて、武装した冒険者のグループと戦うのかは、この時点では明らかではないが、のちに明らかになる。戦いの途中で、ワーウルフの群れのリーダーが戦いに入り、さらに先程まで逃げていた人間たちも戻ってくる。これらの人間たちは実のところはワーベアである。良心の呵責から、冒険者が彼らのために全滅するのを見過ごすことができないのだ。
遭遇のスタート
キャラクターたちが夜間に暗くなった森林を移動しているとき、または森の広場で大休憩をしているときに、次の文章を読み伝えること:
森は日が暮れると静かになる。蝉のさえずりと、詮索好きなシマリスが茂みの中で時折うごめく音だけが、沈黙を乱している。そのとき、君たちの耳が音を捉えた。最初は遠くの方から、しかし、音はだんだん大きくなる。枝が折れる音が聞こえ、それから数十の足が下生えを踏みつける音が聞こえる。
ライカンスロープの大群が彼らに出くわすまで、キャラクターたちには12秒しか残されていない。彼らがキャンプを設置した後だとしたら、今から荷造りして移動するだけの時間はまちがいなくない。もしキャラクターたちがまだ真っ暗な森を進んでいる最中なら、茂みに飛び込むことによって【敏捷力】〈隠密〉チェックをすることができるかもしれない。
人狼の襲来
キャラクターが近づいてくる音にどう反応するかを決めたところで、ワーウルフたちは現場に飛び出る。次の文を読み伝える:
枝を折る足音に、痛みや混乱による叫び声が加わっている。人間の一団が下生えを突き抜けて走ってきたかと思うと、巨大なオオカミの群れがそれを追いかけてきた!人間たちの衣服はぼろぼろで、目には恐怖をたたえている。人間のひとり―――力強い体格をした銀髪の女性が一瞬あなたの方を見るが、すぐにその頭を下にして、下生えへと走っていく。
オオカミたちは足を止めた。鼻を上に向けて、空中で匂いをかぐ。
狼形態の4人のワーウルフのグループが、この遭遇の最初にキャラクターがいた場所からわずか20フィートのところにやってくる。ワーウルフが空気を嗅ぎつけ、難易度13【判断力】〈知覚〉判定を有利で行う。キャラクターがこの遭遇を始めた場所から120フィート以上離れている場合、この判定は自動的に失敗する。失敗すると、ワーウルフたちは逃げる人間たちの方に向きを変え、群れ全体で追いかけていく。成功すると、ワーウルフはキャラクターたちの存在に気が付き、仲間たちに呼びかける。次の文を読むか、言い換えること:
巨大なオオカミは仲間の方を向き、後ろ足で立った。目の前で恐ろしい変化が始まる。オオカミの体がまっすぐになっていくのだ。クルミを石で割ったときのような音とともに、背中がまっすぐになっていく。その前足は爪の先端をもつ灰色がかった腕になり、顔は縮んで柔らかくなり、人間とオオカミの中間のような姿になる。ワーウルフは仲間に向かって吠え、低い唸り声で言う。
「他にもいる。もう一方の獲物を狩るぞ。熊の肉はまたの日のお楽しみだ。柔らかい肉の匂い……ぬるい獲物だ。来い。リーダーが戻る前に、血が滴る肉の部分を食ってしまおう」
ワーウルフたち―――フョードルとリャルカスという名前の2人のヒューマンの男性、タティアナとゾーヤという名前の2人のハーフエルフの女性―――がキャラクターに押し寄せて攻撃する。彼らは、キャラクターが魔法や銀の武器を持っていたり、何らかの魔法を唱えたりするまでは、自らを無敵のように考えて攻撃する。彼らはその後、第一にスペルキャスターを狙い、次にダメージ無効化能力を回避する武器を持っているキャラクターを狙う。
ワーウルフたちは、ヒットポイントを10まで減らされると、次のターンで悲鳴をあげて逃げる。
高レベル。キャラクターが少なくとも11レベルである場合、ワーウルフたちは修正されたステータス・ブロックを使用する。(下記の「より強いワーウルフの作成」を参照)。1人は暗殺者、2人は剣闘士、1人は魔道士だ。魔道士は狼の姿では呪文を唱えることができない。
事態が悪化する
2ラウンドの戦闘の後、イニシアチブが20になると、近くの下生えから勝利の遠吠えが聞こえてくる。
細く飢えた顔をした、毛深い筋肉だらけの男が、そばにオオカミの形をした2人のワーウルフを連れて、木々の方から現れる。彼は、キャラクターが現在戦っている場所から約60フィート離れた森のすそから登場する。
この男はアンドリューシャ、この人狼の群れのリーダーだ。彼は人狼の特徴を持つ剣闘士のステータスを用いる。(下記の「より強い人狼の創造」を参照)。彼は獲物をおもちゃにしながら人形生物の姿で戦うのが好きで、キャラクターに向かってゆっくりと近づいてくる。彼のそばにいる人狼には突撃するよう命じる。
その男は君たちに向かって歩き、笑う。
「お前はまるでウサギだな。俺のアゴの中でもがいている。皮が貫かれたとしても、足が折れたとしても、お前の血が俺の喉に垂れていたとしても、お前は蹴り、ひっかくというわけだ。
抵抗するな! 抵抗すれば、もっと苦しむことになる。ただ俺はお前の腹をかっさばくだけだ。」
彼は自分のそばにいる狼の方を向くと、君たちの方へ促す。「捕まえろ。」
高レベル。キャラクターが少なくとも11レベルであれば、アンドリューシャはブラックガードであり、彼のプレートアーマーは魔法のものである。鎧は彼のハイブリット形態に適合するように変化し、彼が変化するとオオカミ形態に融合する。
熊たちの帰還
もう1ラウンドの戦闘の後、イニシアチブが20になったとき、ワーベアの女とその仲間のひとりが帰ってくる。女の名はチカサク、その連れの名はナノークだ。彼らはキャラクターに向かって叫ぶ。
「あなたをここで死なせることはできない!強くあれ、私たちがこの愚かな獣どもを食い止める!」
そして、彼女らはハイブリッドの形態に変化し、アンドリューシャに同行した2人のワーウルフを攻撃する。
ワーベアに襲われたワーウルフはキャラクターを攻撃するのをやめ、ワーベアに攻撃を集中させる。アンドリューシャはキャラクターに向かって蛇行し、接近するにつれてスピアと盾を抜き放つ。彼はスピアを盾にたたきつけて音を鳴らし、近づくキャラクターには吠えて威嚇する。他のワーウルフが逃げれば、彼は狼の姿になり、彼らの後について逃げ帰っていく。
勝利!
キャラクターと少なくとも一人のワーベア(チカサクかナノーク)が生き残った場合、彼女はキャラクターに近づき、ヒューマンの形に戻る。
彼女はキャラクターが負傷しているかどうか尋ね、この狩りに巻き込んだことを謝罪する。彼女は自らを、この森と周辺の土地を放浪するワーベア・キャラバンの一員だと説明する。彼女らは、ここが人狼アンドリューシャの狩猟場であることを知らずに、森に侵入してしまったのだ。
謝罪として、彼女はキャラクターたちに、数日前にこの森でワーウルフハンターから奪った武器を、銀製のフレイム・タン・ロングソードを差し出す。その銀色の刃は彼女とそのキャラバンたちにとって恐るべきものであったため、彼女はそれを決して使わなかったが、この剣が森をゆく冒険者たちの助けになるかもしれないと考えた。
高レベル:キャラクターが少なくとも11レベルであれば、ワーベアの贈り物は代わりに銀のフロスト・ブランド・ロングソードとなる。
より強いワーウルフの作成
この遭遇における人狼のいくつかは、標準的なワーウルフのステータス・ブロックではなく、モンスター・マニュアルの付録BにあるNPCステータス・ブロックに基づいている。NPCを変更して人狼を作成する場合、次の手順を実行する。
- 開始時のステータス・ブロック(以後「基本クリーチャー」と呼ぶ)を選択する。
- 基本クリーチャーの属性は混沌にして悪に変わり、変身生物のサブタイプを獲得する。
- 基本クリーチャーの歩行速度は、オオカミ形態の間は10フィート増加する。
- 基本クリーチャーのACは、オオカミまたはハイブリッドの形態の間は1増加する。このボーナスは外皮としてカウントされる。基本クリーチャーは一度に複数の種別の鎧から利益を得ることはできない。
- 基本クリーチャーは、銀メッキされていない非魔法的な攻撃による[殴打][刺突][斬撃]に完全耐性を得る。
- 基本クリーチャーは〈知覚〉と〈隠密〉の技能習熟を獲得する。
- 基本クリーチャーの【筋力】は15(+2)に上昇する(15に達していない場合)。
- 基本クリーチャーは、噛みつき攻撃(オオカミまたはハイブリッド形態)とかぎづめ攻撃(ハイブリッド形態)を得る。これらの攻撃は、クリーチャーの他の近接武器攻撃と同じボーナスを命中に使用する。噛みつき攻撃は1d8にクリーチャーの【筋力】修正値を加えたものに等しいダメージを与え、かぎづめは2d4にクリーチャーの【筋力】修正値を加えたものに等しいダメージを与える。
- 基本クリーチャーは、人狼の変身能力と鋭い聴覚と嗅覚の特性を獲得する。
- 人狼が生きているクリーチャーを噛みつきで攻撃した場合、目標は、難易度(8 + クリーチャーの習熟ボーナス + クリーチャーの【耐久力】修正値)、またはクリーチャーの呪文セーブ難易度のいずれか高い方に等しい【耐久力】セーヴィング・スローを行わなければならない。セーブに失敗すると、目標はワーウルフの呪いで呪われる。クリーチャーの習熟ボーナスがわからない場合、ダンジョン・マスターズ・ガイドの脅威度別表で、クリーチャーの脅威度とモンスターステータスを比較して判断すること。